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産駒(さんく/foal)とは、競馬用語で「その馬から生まれた仔馬」のことである。

概要

馬の名前の後につけて、「～の子ども」の意で用いる。例えば、「サンデーサイレンス産駒」といえば、「サンデーサイレンスの子ども」という意味である。漢字からして「～が産んだ馬」の意味のように取れるが、父親の場合にも使われる表現である。

ニコニコ動画では、「産駒」単独でのタグは少ないが、「◯◯産駒」という形のタグがいくつも設定されている。ニコニコ大百科では、特筆すべき産駒が多い「ステイゴールド産駒」の記事が作られている。

競走馬の現役期間は短く、その馬の引退後に産駒たちを応援する競馬ファンは多い。単に競走能力という面だけでなく、親と同様の活躍や、親がなしえなかったことを子が達成してくれることなど、さまざまなことをファンは産駒に夢見る。競馬が「血統のスポーツ^[1]」とされる所以である。

なお、「◯◯産駒」は、同じ馬の子ども同士であるものの、「きょうだい」とは限らない。
馬産の世界で「きょうだい(siblings)」とは同じ牝馬の仔同士をさす表現であり、牡馬の仔同士はそう呼ばない。これは「おじ・おば」「いとこ」など他の近親関係も同様である^[2]。理由は後述する。

牡馬は、種牡馬入りすると様々な牧場から繁殖牝馬を集め、種付けを行う。人気種牡馬ともなれば年間100頭以上になることもあり、必然的に産駒は非常に多くなる。例えば、ディープインパクト産駒は約1800頭である。

馬産で父が同じことを「きょうだい」と言わないのはこれが理由である。これを「きょうだい」に入れてしまうと、サラブレッドの世界はきょうだいだらけになって収拾がつかなくなってしまうのである。

一方、産駒の能力を語る上では父親が重視される。例えば、短距離で活躍したサクラバクシンオーの産駒は短距離路線を進むことが多いし、ダートで活躍したゴールドアリュールの産駒はダート路線を進むことが多い。ただし、例に挙げたサクラバクシンオーは中距離馬だった父サクラユタカオーとは似ても似つかない適性であったように、例外は存在する。

競馬ファンは父と子のつながりにロマンを求めるが、実際には父は種付けをするだけで育児に関わることはないため、子は現役中父と顔を合わせることはない。引退後、種牡馬や功労馬として同じ場所に繋養される可能性がわずかにあるだけである。

父の父の父の父の……と牡系で繋がっていく直系のラインを「サイアーライン」と呼ぶ。牡馬の競走馬は、自身も種牡馬となって父のサイアーラインを繋ぐことが第一の使命とも言える。多数の活躍馬を出した大種牡馬であっても、産駒の活躍馬が牝馬に偏ったり、子世代が種牡馬として結果を残せないとサイアーラインは容易く途切れてしまう。
日本におけるサンデーサイレンスのように、膨大な活躍馬を出し、その子世代からも優秀な種牡馬が多数出て、大きく広がった種牡馬のサイアーラインは、その名を取って「○○系」と称されるようになる。

馬の妊娠期間は340日ほどで、産後おおむね1ヶ月以内に次の種付けが行われる。したがって、繁殖牝馬は(順調にいけば)おおむね1年に1頭出産するといえる。

1頭の繁殖牝馬は、繁殖を引退するまでに、多ければ十数頭の産駒を産む。裏を返せばそれぐらいが限界で、牡馬ほど産駒数は多くない。そのため、名牝の産駒といえども活躍馬が出るとは限らないし、出ても1-2頭ほどである^[3]。競走馬で、強いきょうだいが注目されるのは、それだけ珍しいからでもある。

前述の通り、馬産では同じ牝馬の仔同士のみを「きょうだい」と呼ぶ。このようなルールにしておけば、1頭の馬のきょうだいは多くとも十数頭におさまるためである。このうち、父が異なるきょうだいを「半きょうだい」、同じきょうだいを「全きょうだい」とよぶ^[4]。

産駒の能力面では、母親自身の能力はそれほど重視されないことが多い。母が未勝利や不出走の場合も多い。その代わり母父が重視され、父馬と母父の組み合わせはそれだけで1つの記事になる(例: ステマ配合)ほど奥深い概念である。
また、母の母の母の母の……と牝系で繋がっていくラインを「ファミリーライン」と呼び、この牝系の近いところに活躍馬がどれだけいるかが繁殖牝馬の能力として重視される。多くの活躍馬を輩出しているファミリーは起点といえる牝馬の名前を取った「○○牝系」や、その一族によくつけられる名前から「○○一族」と呼ばれたりする(例：ダイナカールを起点とする「ダイナカール牝系」や、ローザネイを起点とする「薔薇一族」)。