概要
2005年に発売された書下ろしの作品。発売時には「王様のブランチ」で特集が組まれたほか、2006年の本屋大賞では第6位にランクインしており、後に直木賞を獲得した「ファーストラヴ」などとあわせ、島本を代表する作品の1つとして知られている。
原稿用紙740枚程度の文章量のある長編作品。あまりに執筆に入れ込みすぎて4年で卒業する見込みがなくなったことから、島本は当時在籍していた立教大学を中退したほか、執筆期間中には腱鞘炎を発症した。このことからも本作に対する著者の力の入れようがわかるだろう。
高校教師と(元)教え子の恋愛という内容だがさほどキュンキュンするシーンはなく、むしろかなりビターな展開の続く重めの作品である。タイトルの「ナラタージュ」とは、語りや回想で過去を再現する手法を指す映画用語であり、本作も主人公の過去の回想という形でストーリーが展開されている。また、登場人物のうち葉山は映画、小野は音楽に詳しいという設定であることから、作中には数多くの映画や音楽作品が登場する。
映画作品は2017年に公開された。監督は行定勲、主演は有村架純と松本潤。富山県を舞台に撮影され、作中には万葉線なども登場している。ちなみに実は原作出版直後から映画化の構想自体はあったものの、葉山に合う役者が見つからずキャスティングが難航していたため、映画化公開まで12年かかってしまったらしい。
あらすじ
社会人となった工藤泉は、婚約者の傍らで高校時代の恩師・葉山先生のことを思い出していた。
泉が大学2年生の時、母校の演劇部顧問であり、思いを寄せていた葉山から電話がかかってきた。演劇部の部員が減少してしまったため、3年生の卒業公演の客演をお願いしたいのだという。泉は同級生の黒川博文と山田志緒、さらに黒川の友人である小野玲二らとともに稽古に参加。思いがけない再会の中で、泉の中にある葉山への想いが再燃していく。
主な登場人物
- 工藤泉【有村架純】
- 大学2年生で国文学専攻。高校3年生の時から葉山のことが好きで、一度は忘れようとしたものの母校の演劇部の練習に参加するようになって再度思いを募らせていく。葉山の影響で古い映画に詳しい。
- 葉山貴司【松本潤】
- 高校教諭。世界史の先生であり演劇部の顧問。妻が姑との不仲から放火事件を起こしたのを機に心に傷を抱えていたが、自分を頼りにしてくれた泉に依存するようになる。古い映画や建築物が好き。
- 黒川博文【古舘佑太郎】
- 大学2年生で英文学専攻、泉の演劇部の同級生。アメリカへの語学留学を控えている。
- 山田志緒【大西礼芳】
- 大学2年生で心理学専攻、泉の演劇部の同級生。黒川と交際しており、彼のことをクロちゃんと呼ぶ。
- 小野玲二【坂口健太郎】
- 大学2年生で生物学専攻、黒川の友人。一時期大学の演劇サークルに所属していたこともあって、泉たちの高校の舞台を手伝う。トロンボーンの演奏経験があり洋邦問わず音楽に精通している。
- 塚本柚子【神岡実希】
- 高校3年生で演劇部員。絵を描くことが得意で演技もうまく、成績も優秀。卒業を控えながらも進路志望が定まらないことや、欠席や早退が増えていることを葉山から気にされていた。
- 新藤慶【金子大地】
- 高校3年生で演劇部員。基本的に体も声も小さい。柚子と仲が良かったことから、周りからは交際を噂されていた。
- 金田伊織【駒木根隆介】
- 高校3年生で演劇部員。大柄で老け顔が特徴。
関連項目
外部リンク
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