アスワン(ʾAswān)とは、
- エジプト南部の都市。「アスワン・ハイ・ダム」、「アブ・シンベル神殿」などで有名。
- ガンダムシリーズの雑誌企画『ADVANCE OF Ζ ティターンズの旗のもとに』に登場する宇宙戦艦。
- 日本の競走馬。本稿にて記述。
アスワンとは、1979年生まれの日本の競走馬・種牡馬である。鹿毛の牡馬。
前哨戦で皐月賞馬や後のダービー馬に勝利したものの、故障によりダービー挑戦が叶わなかった幻のダービー馬の1頭。
※当記事では活躍した当時に合わせて旧馬齢表記(現在の表記+1歳)を使用しています。
概要
父ノーザンテースト、母リリーズオブザナイル、母父ネヴァーベンドという血統。
父ノーザンテーストは昭和から平成初期にかけて日本のリーディングサイアーに君臨した大種牡馬。
母リリーオブザナイルは5戦1勝で繁殖入りした米国産馬。近親には名種牡馬リヴァーマンがいる。
母父ネヴァーベンドはナスルーラ晩年の産駒で種牡馬として日本にも縁があるミルリーフやブレイヴェストローマンを送り出して活躍していた。
1979年5月14日に北海道早来町の社台ファームで生まれ、馬主も社台総帥吉田善哉その人。当時はまだノーザンテーストはリーディングサイアーになる前で(当時のリーディングサイアーはテスコボーイ)、2つ上のアンバーシャダイと共に社台グループの日本ダービー初制覇を目指してアスワンに掛けられた期待も大きかった。
2歳になったアスワンは後にダイナガリバーで社台グループに初のダービー制覇を齎すことになる美浦の名伯楽松山吉三郎厩舎に入厩した。
現役時代
疲れやすい体質もあり中々調教が進まず、デビュー戦は少し遅めの1981年11月のダート1200mの新馬戦となった。ここは2着に敗れたが、中1週で挑んだ芝1600メートルの新馬戦では前走と同じく1番人気に推され、先行から好位抜け出しの競馬で勝利。3歳時は2戦1勝。
4歳時はクラシック参戦を目指して1月の京成杯から始動。8枠13番の大外枠、実績も新馬戦の1勝ということもあって単勝は6番人気に留まった。主戦の吉永正人騎手も「掲示板に入れば上出来だ」と考えていたが、ハイペースの中後方待機から中山の短い直線を桁違いの脚で駆け上がり、先に抜け出していた7番人気ダッシングハグロをアタマ差で抑え勝利。3戦目で初の重賞勝利を成し遂げた。
しかしその末脚の代償か、裂蹄を発症してしまいその後2か月間を休養に充て、復帰は弥生賞からとなった。休み明けということもあり関西から遠征して来ていた鞍上田原成貴のサルノキング、堅実な走りを続けていた有力馬イーストボーイに次ぐ3番人気となり、人気通り3着。敗れはしたものの皐月賞の優先出走権を手に入れて皐月賞へ向かったが、3馬人気アズマハンターの前に8着に敗れた。
アスワン陣営は悲願のダービー出走を目指し、優先出走権を手に入れるために5月9日のNHK杯に出走した、しかしこのNHK杯にはなんと皐月賞の上位5頭、更に皐月賞1番人気の「黄金の馬」ハギノカムイオー、2番人気のロングヒエンも出走(3番人気は皐月賞馬アズマハンター)と、トライアルとしては稀に見る混戦となり、アスワン自身も7番人気であった。しかし本番では先頭で逃げたゲイルスポートが皐月賞を超えるハイペースで飛ばし、中団に控えたアスワンは東京競馬場の長い直線で末脚を伸ばして皐月賞馬アズマハンター、岡部幸雄騎手騎乗の5番人気アサカシルバーと共に入線。両馬をアタマ差抑えて2度目の重賞勝利を達成した。優先出走権を手に入れた本番の日本ダービー勝利も期待されていたが、その後のレントゲン検査で種子骨の骨折が判明し出走は叶わず、その後復帰することなく引退となった。
この年のダービー馬はバンブーアトラスであったが、アスワンはNHK杯でバンブーアトラスを6着に破っていたため、アスワンは所謂「幻のダービー馬」として出走出来たらどうなっていたのか語られる1頭となっている。
引退後
引退後は1984年から門別スタリオンステーションで種牡馬入り。現在下河辺牧場の代表を務めている下河辺俊行氏が中心となってシンジゲートが結成され、当時不動のリーディングサイアーとなっていた父ノーザンテーストの代替種牡馬として日高地方の中小牧場を中心に人気を集めた。初年度産駒からは高松宮杯優勝、東京優駿や天皇賞(秋)2着などの実績を持つメジロアルダンを送り出し1990年代までは内国産馬としては上位の実績を上げていた。しかし産駒の中からGI馬はついに出ず、2000年代に入ってからは活躍する産駒も少なくなり、2004年に用途変更。重賞馬であったにもかかわらずそのまま行方不明になってしまった。
昭和の日本競馬で興隆を誇っていたノーザンテーストのサイアーラインは現代の日本では断絶状態にある。しかし産駒のメジロアルダンが晩年に中国で種牡馬生活を送っていた時の産駒であるウーディーが現地で今も種牡馬として活躍しており、アスワンはノーザンテースト最後の直径種牡馬を輩出した競走馬となった。何時しか中国から逆に日本にやって来る末裔が現れるかもしれない。
血統表
*ノーザンテースト Northern Taste 1971 栗毛 |
Northern Dancer 1961 鹿毛 |
Nearctic | Nearco |
Lady Angela | |||
Natalma | Native Dancer | ||
Almahmoud | |||
Lady Victoria 1962 黒鹿毛 |
Victoria Park | Chop Chop | |
Victoriana | |||
Lady Angela | Hyperion | ||
Sister Sarah | |||
*リリーオブザナイル Lily of the Nile 1966 黒鹿毛 FNo.10-a |
Never Bend 1960 鹿毛 |
Nasrullah | Nearco |
Mumtaz Begum | |||
Lalun | Djeddah | ||
Be Faithful | |||
Nile Lily 1954 鹿毛 |
Roman | Sir Gallahad III | |
Buckup | |||
Azalea | Sun Teddy | ||
Coquelicot | |||
競走馬の4代血統表 |
クロス:Lady Angela 4×3(18.75%)、Nearco 4×4(12.50%)、Teddy 5×5(6.25%)
主な産駒
- メジロアルダン (1985年産 牡 母 メジロヒリュウ 母父 *ネヴァービート)
- パピヨンフブキ (1985年産 牝 母 フカシフラワー 母父 *カウアイキング)
- リリーズブーケ (1986年産 牝 母 マルベリーダスト 母父 *ダストコマンダー)
- ツルマイアスワン (1987年産 牡 母 ビザンレディー 母父 *ボイズィーボーイ)
- ロイヤルハーバー (1990年産 牡 母 ハーバーロータス 母父 *ハードツービート)
- エルカーサコスモ (1990年産 牝 母 ダンスウィン 母父 *ドン)
- グリーンサンダー (1991年産 牡 母 シャダイアロー 母父 *マリーノ)
- パーソナリティワン (1994年産 牡 母 エイシンマミー 母父 タイテエム)
- アイディアルクイン (1995年産 牝 母 キオイルビー 母父 *ハビトニー)
- カーディアンゴット (1998年産 牝 母 タマモビット 母父 *スルーザドラゴン)
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関連項目
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