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アトモキセチン(Atomoxetine)とは、ADHD治療薬である。先発医薬品名はストラテラ®。
概要
アトモキセチンは、選択的ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(NRI)である。注意欠陥・多動性障害(ADHD)の治療に用いられる。小児のADHDだけでなく、成人のADHDにも使用される。
日本イーライリリー株式会社が製造販売している先発医薬品のストラテラ®にはカプセル剤と内用液剤があり、ジェネリック医薬品にはさらに錠剤もある。嚥下困難な小児には内用液剤が適する。
アトモキセチンには眼球刺激性があるため、カプセル剤を開封したり錠剤を分割・粉砕したりしないこと。もし、内容物が目に付着するようなことがあれば水で洗い流し、必要に応じて眼科を受診すること。
“Atomoxetine”のステム“-oxetine”は、フルオキセチン誘導体であることにちなむ。フルオキセチン誘導体にはパロキセチン(パキシル®)、デュロキセチン(サインバルタ®)、ボルチオキセチン(トリンテリックス®)がある。パロキセチンはうつ病、パニック障害、強迫性障害などの治療に、デュロキセチンはうつ病、線維筋痛症、変形性関節症などの治療に、ボルチオキセチンはうつ病の治療に用いられる。
効能・効果
ADHDは、集中しつづけられない「不注意」、落ちつきがない「多動性」、考えずに行動してしまう「衝動性」が特徴の障害である。一般に学童期にみられ成長に伴い症状が消失するが、成人しても症状を呈するケースがある。課題に集中できなかったり、ものを忘れたり紛失したり、片付けができなかったり、じっと待つことができなかったりするため、しばしば人間関係に影響を及ぼす。
用法・用量
6歳以上18歳未満の患者には、0.5mg/kg/dayより開始し、1週間以上の間隔をあけて0.8mg/kg/day、1.2mg/kg/dayと徐々に増量していき、1.2~1.8mg/kg/dayで維持する。いずれも1日2回に分けて経口投与する。投与量は1.8mg/kg/dayおよび120mg/dayを超えないこと。
18歳以上の患者には、40mg/dayより開始し、1週間以上の間隔をあけて80mgに増量し、以降の増量は2週間以上の間隔をあけて行い、80~120mg/dayで維持する。いずれも1日2回に分けて経口投与する。投与量は120mg/dayを超えないこと。
6歳未満の患者を対象とした臨床試験は実施されていないため、6歳未満の患者に対する有効性および安全性は確立していない。
作用機序
注意や記憶などに関与するノルアドレナリン(NA)神経系の機能異常がADHDの一因とする理論が提唱され、アトモキセチンが開発された。アトモキセチンは、主にNAトランスポーターを阻害(≒NAの再取り込みを阻害)してシナプス間隙のNA濃度を上昇させ、神経機能を亢進させると考えられている。
禁忌・副作用
パーキンソン病の治療に用いられるMAOB阻害薬セレギリン、ラサギリン、サフィナミドとの併用は、モノアミン濃度が上昇するおそれがあり禁忌。MAOB阻害薬の投与中止から2週間以内はアトモキセチンを投与できない。重篤な心血管障害のある患者、褐色細胞腫やその既往歴のある患者、閉塞隅角緑内障の患者、アトモキセチン過敏症の患者に対しても投与禁忌。
アトモキセチンの副作用としては、悪心・嘔吐、腹痛、食欲減退、体重減少、頭痛、傾眠、めまい、動悸などがある。まれだが重大な副作用として肝機能障害、アナフィラキシーがある。気になる症状があれば医師や薬剤師に相談すること。
同種同効薬
選択的ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(NRI)として、ヴィロキサジン(Qelbree®)、レボキセチン(Edronax®)、エディボキセチン、ニソキセチンなどがある。日本では販売されていないが、海外ではヴィロキサジンがADHDの治療に、レボキセチンがうつ病やADHDの治療に用いられている。
ADHD治療薬として、本邦で承認されているものにメチルフェニデート(コンサータ®)、リスデキサンフェタミン(ビバンセ®)、グアンファシン(インチュニブ®)がある。メチルフェニデートとリスデキサンフェタミンは、どちらもドーパミンやノルアドレナリンの遊離を促進し再取り込みを阻害する精神刺激薬であり、依存性が認められる。グアンファシンは選択的α2A受容体作動薬で、アトモキセチンと同じく依存性や濫用のリスクが少ない。
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関連項目
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