アリストテレス(英:Aristoteles)とは、2017年生まれの日本の競走馬。鹿毛の牡馬。
主な勝ち鞍
2021年:アメリカジョッキークラブカップ(GII)
※なお日本ではこの馬名は2代目で、初代は1973年生まれの牝馬。地方で68戦3勝。
※海外にも同名の競走馬が複数いるが、それについては後述。
概要
父エピファネイア、母ブルーダイアモンド、母父ディープインパクトという血統。
父は父シンボリクリスエス、母シーザリオの超良血馬で、2013年の菊花賞と2014年のジャパンカップを勝った名馬。アリストテレスは同期の牝馬三冠馬デアリングタクトともども初年度産駒にあたる。
母は6戦未勝利だが、母系は多数の活躍馬を出している名繁殖牝馬の血統(詳細は後述)。
母父は説明不要の無敗三冠馬にして現代日本競馬最大の大種牡馬。
同じエピファネイア産駒のデアリングタクトやエフフォーリア、サークルオブライフなどと同様に、*サンデーサイレンスの4×3(いわゆる「奇跡の血量」)となるインブリード配合である。
2017年4月8日にノーザンファームで誕生。オーナーはカンパニーなどを所有する近藤英子(「アドマイヤ」冠名でおなじみ近藤利一の前妻)。
馬名はもちろん、古代ギリシアの哲学者に由来する。ちなみに半弟には「ソクラテス」(2019年産、父ドゥラメンテ)がいる。
ターフの哲学者
2歳~3歳夏
栗東の音無秀孝厩舎に入厩し、2019年9月28日の阪神の新馬戦でデビュー(2着)。10月の2戦目で初勝利を挙げたが、その後は12月の1勝クラス、明けて3歳となって1月の若駒S(L)、3月のすみれS(L)と3戦連続2着に終わって収得賞金を加算できず、皐月賞は断念。
5月、日本ダービー出走を目指してトライアルのプリンシパルS(L)に出走したが、馬体重が若駒Sから14kgも減ってしまった(468kg→454kg)せいもあってか6着。春のクラシックには参戦できないまま休養に入る。
休養を経てひとまわり馬体も大きくなり、ミルコ・デムーロを鞍上に8月の出雲崎特別(新潟・1勝クラス)、9月の小牧特別(中京・2勝クラス)と条件戦を連勝。夏の上がり馬としてGI菊花賞へと駒を進めた。
菊花賞・vs無敗三冠馬
菊花賞では無敗の三冠を目指すコントレイルが単勝1.1倍の圧倒的1番人気で、2番人気以降が単勝10倍超えという完全な1強ムード。未勝利戦以来のクリストフ・ルメールに乗り替わった本馬は4番人気ながら単勝23.0倍であった。
レースでは道中中段につけたコントレイルを完璧にマークし、すぐ横をぴったり追走していく。じーっとコントレイルに貼り付いたまま直線に入ると、一緒に抜け出して熾烈な叩き合いに突入。完全な2頭のマッチレースとなり、コントレイルを追いつめたが最後までクビ差届かず2着惜敗。
鞍上のルメールによるとコントレイルより僅かに仕掛けが遅れ、「最後まで一度も捉まえられると感じないままでした」とのことだったが、無敗の三冠馬と接戦を演じたことで古馬戦線での活躍が期待された。
4歳春
明けて2021年、古馬となっての初戦は1月のGIIアメリカジョッキークラブカップ。コントレイルとの接戦が評価され単勝2.4倍の1番人気に支持されると、道中は先行集団を6番手で追走し、コーナーで外目から前に押し出して直線で抜け出し押し切り勝ち。人気に応えて重賞初制覇を飾る。
……そう、ここまでは順調であったのだが……。
続いて天皇賞(春)を目標に、3月のGII阪神大賞典へ。重馬場だったが前走のAJCCも不良馬場で勝っているということで、単勝1.3倍という圧倒的1番人気に支持される。道中中団前目からコーナーで外に持ち出すという前2走のパターンに持ち込むが、道中引っかかってしまったせいか残り200mでぱたっと脚が止まり、ずるずると後退してディープボンドの遙か後方で7着惨敗。
阪神大賞典の負け方が懸念されたものの、本番のGI天皇賞(春)では天皇賞5連勝中のルメールが鞍上ということもあってディープボンドに次ぐ2番人気。例によって道中6番手で先行集団を見る位置でレースを進めたが、直線に入っても伸びを欠いて外から捲ってきたワールドプレミアに置いて行かれ、先行したディープボンドはおろか牝馬のカレンブーケドールも差し切れず4着。
ステイヤーとしての資質に疑問符がついたこともあり、次走は勝ったAJCCと同じ2200mのGI宝塚記念へ。ルメールがクロノジェネシスに騎乗するため鞍上は武豊となったが、中団から直線で全く伸びず何の見せ場もなく9着惨敗。コントレイルが大阪杯でレイパパレに敗れたあと宝塚記念を回避、そのレイパパレもこの宝塚記念でクロノジェネシスに完敗したため、それに加えてアリストテレスの生彩を欠く姿はコントレイルの評価にまで影を落とす格好になってしまった。
4歳秋
夏を挟んで秋初戦はGII京都大賞典。鞍上は小牧特別以来のミルコ・デムーロ。1番人気に支持され、いつも通りの道中前目から直線で馬場の真ん中を抜け出し、残り200mでキセキを捉えて先頭。これは勝った!と思った瞬間、ゴール手前で外から突然急襲してきたのは、なんと8歳の2016年ダービー馬マカヒキ! もう5年も勝利がない8歳馬の、信じられない急加速にハナ差かわされたところがゴール板。ダービー馬の感動の復活勝利の引き立て役になってしまった。
続いては菊花賞以来の再戦にして、コントレイルの引退レースとなるGIジャパンカップ。鞍上は何の因果か、天皇賞(秋)にてエフフォーリアでコントレイルを破った横山武史。アリストテレスは4番人気とはいえ単勝20.5倍。1.6倍に支持されたコントレイルと、菊花賞で接戦を演じたときと奇しくも似たオッズである。
レースでは逃げると思われたキセキが出遅れたため、なんとアリストテレスが先陣を切って逃げる格好になる。向こう正面に入ってキセキがすごい勢いで上がってきて3コーナー手前で先頭を譲ると、あとは直線で置いて行かれて9着。菊花賞の再現・リベンジとはならず、大阪杯以降何かと言われ続けたコントレイルが、無敗三冠馬の意地を見せて有終の美を飾るのを後方で見届けた。
秋の最終戦は年末のGI有馬記念。鞍上は武豊、さすがに人気は自己最低の9番人気。スタートで出負けして最後方からのレースとなり、追い込んで意地は見せたが上位勢には届かず6着が精一杯。エフフォーリアと横山武史という新たな名コンビの快進撃を見送った。
5歳
5歳となる2022年は3月の日経賞から始動の予定だったが、直前の調教中に放馬して負傷し回避。
改めて5月のGII目黒記念に向かい、ドウデュースで6度目のダービー制覇を果たしたばかりの武豊を鞍上に挑んだが、終始後方で直線でも全く伸びないままブービー17着の惨敗。
秋は鮫島克駿を鞍上に、GII京都大賞典から始動。4番人気を背負って道中は5→4番手に付き悪くないペースだったが、最終直線で伸びを欠き、同期で下級戦をコツコツ歩いてダートから芝に転向してきたヴェラアズールの11着。
年末のGI有馬記念には昨年に続き武豊とともに挑んだが、道中掛かってしまったためか4コーナーで最後方まで後退してしまい、直線で2頭をかわしただけで何も見せ場なく14着。
6歳
明けて6歳の2023年は、2年前に勝利したGIIアメリカジョッキークラブカップから始動。鞍上は横山和生。大外枠からユーバーレーベンと並んで後方に控え、外を捲っていくユーバーレーベンを見送って最内につけたまま直線を向き、内を追い込んだが7着まで。着外ではあるが、そもそも走る気がほとんど見えなかった昨年に比べれば希望の持てる内容ではあった。
苦しい戦いが続くターフの哲学者は、かつての輝きを取り戻せるだろうか。
血統表
エピファネイア 2010 鹿毛 |
*シンボリクリスエス 1999 黒鹿毛 |
Kris S. | Roberto |
Sharp Queen | |||
Tee Kay | Gold Meridian | ||
Tri Argo | |||
シーザリオ 2002 青毛 |
スペシャルウィーク | *サンデーサイレンス | |
キャンペンガール | |||
*キロフプリミエール | Sadler's Wells | ||
Querida | |||
ブルーダイアモンド 2011 黒鹿毛 FNo.1-l |
ディープインパクト 2002 鹿毛 |
*サンデーサイレンス | Halo |
Wishing Well | |||
*ウインドインハーヘア | Alzao | ||
Burghclere | |||
グレースアドマイヤ 1994 鹿毛 |
*トニービン | *カンパラ | |
Severn Bridge | |||
*バレークイーン | Sadler's Wells | ||
Sun Princess | |||
競走馬の4代血統表 |
クロス:サンデーサイレンス 4×3(18.75%)、Sadler's Wells 4×4(12.50%)、Hail to Reason 5×5(6.25%)
- 2代母グレースアドマイヤの子に皐月賞優勝のヴィクトリー、阪神大賞典など重賞3勝のリンカーンがいる。
- 3代母バレークイーンの子に東京優駿優勝のフサイチコンコルド、皐月賞優勝のアンライバルド、京成杯優勝のボーンキングがいる。
- 4代母のサンプリンセスは英オークス、ヨークシャーオークス、英セントレジャー優勝馬で、凱旋門賞でも2着に入着している。
海外の同名馬
本馬の欧字表記は「Aristoteles」だが、これは「アリストテレス」のラテン語表記(正確には「Aristotelēs」)で、英語での表記は「Aristotle」(発音は「アリストートル」)になる。
「Aristotle」という名前の競走馬は複数おり、18世紀や19世紀の馬も確認できる。
そのうち、1997年生まれのアイルランド産馬(Sadler's Wells産駒)は1999年のイギリスGIレーシングポストトロフィー(現:フューチュリティトロフィー)を勝利している。
また本馬と同じ「Aristoteles」表記の競走馬も複数確認できるが、こちらはこれといった実績馬はいないようだ。
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関連項目
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