アンスバッハとは、以下のものを指す。
- ドイツ南部の都市名。人口4万人ほどの小都市である。
- キャラクターの姓名として用いられる名前。
- アンスバッハ……小説・アニメ『銀河英雄伝説』の登場人物。本項で記述。
- ヴェーネ・アンスバッハ……フリーゲーム『Seraphic Blue』の登場人物。
- ジークベルト・アンスバッハ……フリーゲーム『Seraphic Blue』の登場人物。
- フリッツ・アンスバッハ……フリーゲーム『Seraphic Blue』の登場人物。
アンスバッハ(Ansbach)は、小説・アニメ『銀河英雄伝説』の登場人物。
担当声優は井上真樹夫(石黒監督版)、東地宏樹(Die Neue These)。
概要
帝国軍准将。オットー・フォン・ブラウンシュヴァイク公爵の部下で忠実な腹心。
リップシュタット戦役に際しては最期まで主君に付き従い、ラインハルト・フォン・ローエングラムの暗殺を試みた。
所属と登場時期について
クロプシュトック事件(小説では帝国暦486年3月、OVAでは同487年半ば)発生時に帝国軍准将の地位にあることが確認できるが、帝国軍人であるのかブラウンシュヴァイク家の私兵軍団に属しているのかあるいは両方の軍籍を持っているのかは判断が難しい。道原かつみによる漫画版ではアンスバッハ家はブラウンシュヴァイク家に代々仕えていると言う描写があるものの、こちらでも所属については不明である。ただ、いずれの媒体でもブラウンシュヴァイク公個人に忠誠を誓っていることは理解できる。
OVA版ではクロプシュトック事件が本編に組み込まれているため作品上の初登場はここだが、小説版ではリップシュタット連合結成後(外伝では一巻「星を砕く者」)である。なお、OVA版では帝国暦485年に開かれたグリンメルスハウゼン邸でのパーティーにブラウンシュヴァイク公と共に参加しており、時系列上ではこの時点がもっとも早い(ただし、ワンカットでありセリフもなくラインハルトも特に意識していない)。
略歴
前半生は不明である。ただ、物語の開始時点ではブラウンシュヴァイク家に仕えている。この時点で既に壮年であり、准将という地位と釣り合った年齢である。
帝国暦486年(または487年)、かつて皇帝の後継者を巡る政争に敗れブラウンシュヴァイク公に恨みを抱いていたクロプシュトック侯がブラウンシュヴァイク邸に爆弾テロを仕掛ける事件が発生。爆弾は爆発したものの、事前に片付けられてしまっておりブラウンシュヴァイクは軽傷。フリードリヒ4世も行幸予定を体調不良によりキャンセルしていたため、両名の暗殺は失敗した。この事件において同僚であったシュトライト准将と共に現場責任者として事態の収拾に当たったと思われる。OVAでは時系列変更のためカットされたが、クロプシュトック事件後に発生したラインハルトとフレーゲルのいさかいも公平に解決し、ラインハルトの知遇を得ている。
帝国暦488年4月、ラインハルトによるエルウィン・ヨーゼフ2世擁立に反感を持ったブラウンシュヴァイク公とリッテンハイム侯、それに同調した門閥貴族は連合してこれを排除することを誓約した(リップシュタット連合)。ほどなく軍事衝突が発生し、首都星オーディンを追われた門閥貴族はガイエスブルク要塞を中心とした要塞群を頼って逃亡。ラインハルト陣営との内戦が勃発した(リップシュタット戦役)。この時、アンスバッハはブラウンシュヴァイク公の脱出を立案・実行し、ガイエスブルクに入城している。
同4月、レンテンベルク要塞攻防戦で捕虜となったのち解放されてガイエスブルクに帰還したオフレッサー上級大将が謀反の疑いをかけられブラウンシュヴァイク公に詰問される事態が勃発。オフレッサーは無実を訴えるべくブラウンシュヴァイク公に詰め寄るも、動転したブラウンシュヴァイク公の命令を受けたアンスバッハがこれを射殺。アンスバッハ本人はオフレッサーの裏切りには疑問を抱いたが、狭量なブランシュヴァイク公は聞く耳を持たず、裏切りによる処刑であることを喧伝した。これにより、ただでさえ一枚岩ではなかったリップシュタット連合に大きな亀裂が生じる。
同7月にはキフォイザー星域の会戦において連合の片翼を担っていたリッテンハイム侯の艦隊が壊滅。その後、リッテンハイム侯は味方の自爆テロにより横死し、もって全兵力の3割を損失した。続くガイエスブルク周辺での会戦においても大敗を喫し、折からの搾取による民心の離反もあり連合は瞬く間に危機に瀕することとなる。
同8月、ブラウンシュヴァイク公の領地である惑星ヴェスターラントにおいても民衆の反乱が発生。ブラウンシュヴァイク公の甥であったシャイド男爵が殺害される事態に至る。これに激怒したブラウンシュヴァイク侯はヴェスターラントへの核攻撃を指示。この時代においては熱核兵器を地上に向けて使用することは禁忌であり、アンスバッハは全力をもってブラウンシュヴァイク公を諌めるも彼は聞く耳を持たなかった。核攻撃の決定後、ゴールデンバウム朝の崩壊を予知し一人で嘆きごとを呟いていたところをブラウンシュヴァイク公に密告した者(OVAではローエングラム陣営の工作員であったヤーコプ・ハウプトマン)がおり、そのまま拘禁され以後は連合の崩壊まで謁見が叶わなくなる。
結局、ヴェスターラントへの核攻撃は実行され民衆約200万人を殺害。アンスバッハが危惧した通り、名実ともに連合の正当性は消滅する。
追い詰められたブラウンシュヴァイク公は残存兵力をかき集めた最後の一戦に臨む。この戦いでも敗北を喫し、今度は散々虐げられてきた一般兵士たちが運命を共にすることを拒否して反乱を実行。要塞内は無秩序状態となり、アンスバッハも混乱に紛れてなし崩し的に解放される。
しかし、忠誠心が残っていたのか、単なる義務感か、あるいは哀れな主君への同情心か、逃亡はせずに、侍る者もいなくなり要塞内を彷徨うブラウンシュヴァイク公に謁見する。その場でブラウンシュヴァイク公に娘を差し出した上での講和について持ちかけられるも、可能性が皆無であることやヴェスターラントの一件だけを取っても処刑は確実であることを彼に諭し、自害をすすめる。観念したブラウンシュヴァイク公はこれを了承するも、同時にアンスバッハにラインハルトの暗殺を懇願した。最終的に同意したことをもってブラウンシュヴァイク公は服毒自殺(実際は最期になって暴れ出し、無理やり毒を飲まされた)。リップシュタット戦役は終結した。
同9月9日、ガイエスブルク要塞内で開かれたリップシュタット戦勝記念式典において、アンスバッハはブラウンシュヴァイク公の遺体と共にラインハルトの前に引き出された。しかし、遺体には事前にハンドキャノン(装甲車や単座式戦闘艇を一撃で破壊可能な重火器)が仕込まれており、これを取り出しラインハルトに向けて発射。オーベルシュタインがとっさに前面に出たことにより狙いは外れ、さらなる攻撃に出ようとしたところをキルヒアイスに取り押さえられる。この時、指に装着していた指輪型のブラスターを覆いかぶさったキルヒアイスに発射し、胸を貫く致命傷を負わせる。
ラインハルトの暗殺に失敗したことを亡君のブラウンシュヴァイク公に詫びつつ、片足とも言えるキルヒアイスを殺害したことに満足し、口腔内に仕込んでいた毒入りカプセルをかみ砕いて自決した。享年は不明。
人物
組織として評価の低い門閥貴族・リップシュタット連合軍の軍人であるが、その中では大変に良心的な人物。ゴールデンバウム王朝の崩壊を悟った「黄金樹(ゴールデンバウム)は倒れた」はつとに有名であり、OVA第23話の表題にもなっている。オフレッサーの死から自分の壮絶な最期も予期しており、この救いのない組織の中で作者や読者目線から物事を見ていたとも言える。
軍人としての能力は発揮するシーンがないが、OVAでは上述のようにブラウンシュヴァイク公と共に貴族のパーティーに出席するシーンがある。帝国では議会がなく、主にこのような私的なパーティーや園遊会で政治政策が決められていたため、その民衆重視の姿勢からも政治能力の高さが買われた上で秘書官や参謀の役割を担っていたのかもしれない。
忠誠心は間違いなく高かったが、報われたことは主君からも社会体制からも一度としてなかった。逆にラインハルト暗殺未遂とキルヒアイス殺害から、おそらく後世においては相当な悪評を被ったことは想像に難くない。しかし、ラインハルト本人はその忠誠心には美を感じ、アンスバッハを憎むことはなかったと言われる(それ以上に自責の念が強かったのが事実でもあるようだが)。
関連人物
- オットー・フォン・ブラウンシュヴァイク - 公爵。アンスバッハの主君。劇中では無能・傲慢振りが目立つが、舌禍事件の際は即座に処刑せず「自身で取り調べる」と拘禁に留めたことからも、主観として嫌っていた訳ではないようだ。
- アントン・フェルナー - 大佐。同僚だが、アンスバッハ、シュトライト、フェルナーの部下三人組の中ではかなり若い。リップシュタット戦役開戦の切っ掛けを作るが、失敗すると即座に門閥貴族を見限った。
- ジークフリード・キルヒアイス - 暗殺未遂事件の被害者。必ずしも当世での評価は高くなかったが、アンスバッハは彼がラインハルトの半身であり、その死が彼自身の死にも匹敵することを見抜いていた。
関連項目
- 6
- 0pt