ジョアン・モレイラ(João Moreira、1983年9月26日 - )とは、ブラジル出身の騎手である。
概要
1983年9月26日、ブラジル南部のパラナ州クリチーバ出身。7人兄弟という大家族のもとに生まれ、木造の小屋で暮らしていたが、幼少期に父が他界し、生活がそれまで以上に苦しくなってしまう。そんな貧しい家庭環境故に道を踏み外しかけ、同じような境遇の仲間たちとつるみ、いたずら目的で近所の農耕馬や荷役馬に勝手に乗って遊んでいた。これが馬との出会いであった。
その後、既に社会に出ていた兄の導きで更生し、家族を助けるために製材工場で働き始めた。
1997年、14歳の頃に騎手を志し、サンパウロの騎手アカデミーに入学し見習い騎手となる。最初は40人いた同期たちは、デビュー直前には8人まで減っていた。
2000年にデビューを果たす。ただ、なかなか勝ち星が伸びず、「他の仕事を探したほうがいい」とまで言われた。その後もなかなか勝てず騎手免許剥奪の崖っぷちまで追い込まれたが[1]、この苦境をギリギリのところで乗り越えると[2]、師匠となる調教師と出会い、ここから飛躍が始まる。
2003年に見習い騎手から騎手に昇格。2004年-2005年シーズンにエンヒキ・ポソロ大賞をHigh Court(ハイコート)で勝利し、GⅠ初制覇達成。同シーズン サンパウロでリーディングジョッキーになると、そこから4シーズン連続でリーディングジョッキーに輝き、2008年Bubbly Jane(バブリージェーン)、2009年にPresente(プレセンチ)でGⅠディアナ大賞を連覇を達成。2009年には通算1000勝に到達するなど名実ともにブラジルのトップジョッキーとなる。
その活躍はブラジルのみに収まらず、南半球を中心に国外の競馬でも活躍。2006年にはアルゼンチンGⅠナシオナル大賞をEu Tambem(エウタンベン)で勝利している。
2009年からは拠点をシンガポール競馬に移す。2010年から2013年にかけて4季連続でリーディングジョッキーとなり、2012年には年間206勝を挙げ、シンガポール競馬の歴代最多勝利記録を更新。2013年には1日9レースの内8レースで勝利を挙げるなど、圧倒的な成績を残した。
2013年10月、香港競馬へ移籍。同年は短い騎乗期間であったにもかかわらず97勝を挙げてリーディングジョッキー2位という成績を残す。翌年2014年-2015年シーズン香港競馬の記録を塗り替える145勝を挙げてリーディングジョッキーとなり、2016年-2017年シーズンまで3季連続でリーディングジョッキーに輝く。
2017年にはこちらも香港競馬記録となる1日7勝を挙げたほか、2017年にはRapper Dragon(ラッパードラゴン)の主戦騎手として香港史上初の4冠を達成。
また、2016年にはモーリスをチャンピオンズマイル制覇、サトノクラウンを香港ヴァーズ制覇へと導き、翌2017年にはヴィブロスをドバイターフ制覇、ネオリアリズムをクイーンエリザベス2世カップ制覇へと導いた。
2018年7月、JRAの通年免許取得のために騎手試験の受験を発表。短期免許を取得し、年末まで日本で騎乗。試験の方は一次試験で不合格となったが、その間キーンランドカップにてナックビーナスを勝利に導きJRA重賞初制覇を達成すると、リスグラシューをエリザベス女王杯制覇へと導きJRA GⅠ初制覇を達成している。
以降も香港を拠点に世界のトップジョッキーとして活躍を続けたが、2020年、新型コロナウイルス蔓延に伴い、暗転。香港の新型コロナ対策の規制・蔓延防止策は厳格かつ厳しいものであり、家族と触れ合うことすらままならないような状況であったという。2022年11月末、家族とのコミュニケーションが取れないことでの精神的負担が大きいことと、股関節の負傷を理由に、2022-23年シーズンの免許を返納することを発表。
2022年12月、ブラジルに復帰。2023年には、これまでに騎乗経験のある日本やヨーロッパ、オーストラリアの関係者に感謝を伝える『ライドツアー』を決行。世界中を転戦し、日本ではキングズソードをJBCクラシック制覇に導いている。
人物・エピソード
巧みなコース取りや、強気なイン突きを武器に活躍する世界的名手。日本馬の海外遠征時に騎乗することも多いため、日本でも知名度の高い騎手である。
騎乗馬を巧みに操り、勝ちきれない馬や気性難の馬でも勝利へ導く様子から「マジックマン」の異名を持つ。香港では「雷獣」と呼ばれることもある。
幼少期の生活が非常に貧しかったこともあり、人一倍ハングリー精神を持っている。
主なGⅠ級勝鞍
ドバイターフ | ヴィブロス(2017年) |
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チャンピオンズマイル | モーリス(2016年) |
クイーンエリザベス2世カップ | ネオリアリズム(2017年) |
JBCクラシック | キングズソード(2023年) |
エリザベス女王杯 | リスグラシュー(2018年) |
香港ヴァーズ | サトノクラウン(2016年) グローリーヴェイズ(2019年・2021年) |
関連動画
関連コミュニティ・チャンネル
関連項目
脚注
- *ブラジル競馬には、騎手デビューから半年間で6勝、1年間で30勝、1年半で60勝をという数をクリアできないと騎手を続けることができない、というルールがある
- *最初の半年が終わる日時点で4勝しかできていなかったが、最終日に2勝をなんとか挙げた。そのうち一頭は単勝人気100倍台の大穴であった。
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