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スターリングモス

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スターリング・モス（Stirling Craufurd Moss,1929年 9月17日 - 2020年 4月12日）とは、1950年代に活躍したイギリス出身の元レーシングドライバーのことである。

「無冠の帝王」「Mr.モーターレーシング」「スピードの化身」の異名を持つ。

概要

1929年、イギリスのロンドン・ウエスト・ケンジントンにて生を受ける。両親はともにアマチュアのレーサーであった。

9歳の頃に小型乗用車のオースチン・9を買い与えられ自宅の周辺でドライブし始め、15歳で運転免許を取得。第二次世界大戦終戦後の1947年(18歳)頃から本格的にレースに参戦を始める。

1950年にはF1世界選手権の前座レースなどで光る走りを見せ一躍注目を浴び、1951年開幕戦スイスGPでのHWMからのデビューが決まった。

F1デビュー後

デビュー戦では決勝14番手スタート、雨天の中で行われたが粘り強く走り8位でフィニッシュ。

以降はERA（1952年）、コンノート（1953年）、クーパー（1953年）とスポット参戦が続いたがマシンのスペックが決して高くはなく、3シーズンでノーポイント。

1954年、メルセデスへの加入を希望するも実績不足を指摘され断念。自費でマセラッティ 250Fを購入しプライベーターとして参戦。

第3戦ベルギーGPでは9番手スタートから上位陣のリタイアがあったものの着実に順位を上げ3位でフィニッシュし初の表彰台を獲得。第5戦イギリスGPではファステストラップを記録(結果はリタイア)し、マセラッティのワークスチームにステップアップ。

第8戦イタリアGPでもリタイアとなったものの終盤までトップを快走。

入賞は第3戦の一度のみだったものの存在感を示した。ドライバーズランキングは13位(4.14P)。

1955年、前年の活躍が認められ、念願だったメルセデスのワークスチームヘ移籍。

当時最強と言われたマシン、W196を駆り大躍進、第4戦ベルギーGP、第5戦オランダGPで2戦連続の2着、母国開催の第6戦イギリスGPでは初のポールポジションスタートから1着でポール・トゥ・ウィン達成、更にファステストラップも記録。

チームメイトにしてメルセデスのエースであったファン・マヌエル・ファンジオとのタイトル争いは最終戦までもつれたものの、モスが最終戦リタイアとなり決着。ドライバーズランキングはファンジオに次ぐ2位となった(23P)。

1956年、メルセデスが活動休止したため古巣のマセラッティに復帰。

このシーズンもフェラーリへ移籍したファンジオとの激しいチャンピオン争いとなった。

第2戦モナコGP、最終戦イタリアGPで2勝、ファステストラップ3度記録と活躍しドライバーズランキングは前年に次ぐ2位であった(27P)。

1957年、開幕戦はマセラティから出場し2戦目以降はヴァンウォールへ移籍。

尻上がりに調子を上げ終盤4戦で3勝を挙げる活躍を見せるも、ドライバーズランキングは3年連続でファンジオに次ぐ2位であった(25P)。

この年は6戦に参戦し10ポイントを獲得しランキングは10位であった。

1958年、開幕戦のみプライベーターのロブ・ウォーカーから出場し2戦目以降は前年同様ヴァンウォールからの参戦。

開幕戦の勝利を含む4勝を挙げたものの、リタイアも多く、一方でリタイアの少なかったマイク・ホーソーンが1P差で初のタイトルを獲得（ドライバーズランキング:2位、41P）。

第9戦のポルトガルGPでモスが勝利した際、2着のホーソーンがコースアウトからの再始動時に逆走したと指摘され失格処分を受けかけたが、モス本人が「ホーソーンが車を押したのはコース外の事だ」と主張し、ホーソーンが2着に復活。結果的にはこのポイントによりチャンピオンを逃したということになる。

1959年、ヴァンウォールが撤退したことを受けプライベーターのロブ・ウォーカーからの参戦（BRPからも3戦に出場）。

ワークスチームに比べ戦闘力の劣るマシンでの戦いを強いられるものの、第5戦イギリスGPでファステストラップを記録する2着(BRPからの参戦)、第7戦ポルトガルGP、第8戦イタリアGPで2戦連続でポール・トゥ・ウィンを飾るなどチャンピオン争いに最後まで絡むも、最終戦アメリカGPはリタイアに終わった。

ドライバーズランキングは3位(27P)。

1960年もロブ・ウォーカーから参戦。

第2戦モナコGPで勝利するも、第5戦ベルギーGPの予選で両足を骨折しシーズンの半分を欠場。しかしながら最終戦のアメリカGPで優勝するなど底力は見せた。

ドライバーズランキングは前年に続き3位(19P)。

1961年もロブ・ウォーカーからの参戦。

開幕戦モナコGPでポール・トゥ・ウィン、第6戦ベルギーGPでも勝利し2勝。

しかしリタイアも4戦と多くドライバーズランキングは3位に終わった(21P)。

F1引退、その後

翌シーズン開幕前の非選手権レースに出場。しかしこのレースでドライブしていたマシンがコースアウト。頭部を負傷し意識不明の重体に陥り、幸いにも一ヶ月で意識が戻ったものの半年間は麻痺が残った状態となっていた。

翌1963年にドライバー復帰を目指し怪我の状態を見ながらテスト走行を行うも、怪我への不安からドライブに集中できず、現役引退を決意した。

その後は辛口なレース評論家として活動。

1980年にイギリスツーリングカー選手権 (BTCC) に出場し現役復帰し、以降もヒストリックカーのレースなどに定期的にレースに参戦していた。

1990年国際モータースポーツ殿堂入り。2000年ナイトの称号を与えられた。

2011年に正式にモーターレーシングから引退。

2020年 4月12日、自宅で死去。享年90歳。多くのドライバーや関係者だけでなく、ライバルだったフェラーリからも哀悼のメッセージが送られた。

人物・エピソード

マシンの限界までプッシュする攻撃的な走りが持ち味。
- その果敢な走り故にリタイアも多かった。
アグレッシブな走りや、戦闘力の劣る非ワークスチームのマシンで好走する姿からファンを魅了した。
凌ぎを削ったドライバーにも名ドライバーが多く、「世界チャンピオンにならなかった最も偉大なドライバー」と評されることも多い。
モス自身は現代のドライバーと実力を比較されるのを嫌う傾向にあった。
- マシンシステム・レースプログラムの違いなどから単純な比較ができないことや、当時は今ほど安全意識が高くなく、年間に数名死者や重傷者が出ることもあり、現代とは恐怖心が別のレベルにあるという考えから。
母国では英雄的な扱いをされており、手紙の宛名を「スターリング・モス、イングランド」と書くだけで届くという逸話がある。
愛国心が強く、イギリスのチームから参戦することにこだわりがあった。。
- そのためフェラーリなどのワークスチームから参戦していれば何度もチャンピオンになっていたと言われることが多い。
妹のパット・モスもラリードライバーとしてもヨーロッパ・レディースカップを5度制覇している。
富士スピードウェイの建設にアドバイザーとして関わっていた。
メルセデス・ベンツから彼の名を冠した「メルセデス・ベンツ・SLRスターリング・モス」が75台限定で販売された。