志あれば
外から内から自由自在
危険をいとわぬ戦術と
才知に富んだ計略とその走りを育んだのは
関わった人たちの
勝たせてあげたいという願い
自身の中に芽吹いた
負けたくないという想い
セイウンワンダーとは、2006年生まれの日本の競走馬である。青毛の牡馬。
主な勝ち鞍
2008年:朝日杯フューチュリティステークス(GI)、新潟2歳ステークス(GIII)
2010年:エプソムカップ(GIII)
デビュー前~2歳時
父グラスワンダー、母セイウンクノイチ、母父サンデーサイレンスという血統。
セイウンワンダーは北海道の個人牧場で誕生した。生産者は筒井征文氏。牧場は後継者がいない状況で、現生産者も高齢になったことから、サラブレッドの生産より手のかからない黒毛和牛の生産へ移行しようとしていた。2006年4月30日、黒毛和牛のような青毛(*青より黒に近い毛色である)の仔馬が生まれた。セイウンクノイチの06、のちのセイウンワンダーである。
セイウンクノイチの06は1歳馬セールでJRAに購入され、育成馬としてトレーニングを積み、2008年春にブリーズアップセールに上場された。ここで大谷高雄オーナーに2730万円(税込)で落札され、馬名がセイウンワンダーとなった。馬名由来は母セイウンクノイチと父グラスワンダーの一部をとった単純なもので、この馬名が元で、のちにちょっとした騒動?が起こることに…。
栗東・領家厩舎に預けられ、2歳6月の阪神競馬でデビューすることになった。デビュー戦こそ僅差の2着に負けるが、続く未勝利戦は快勝。重賞、新潟2歳ステークスに乗り込み、1番人気でレースに臨んだ。
不良馬場の新潟競馬場、セイウンワンダーはスタートで遅れ、最後方からレースを進めた。いくら直線の長い新潟でもこの位置取りはどうなんだ岩田ェ…と、スタンドからどよめきが起こる中、最後の直線へ。不良馬場に加え、開催最終週、前を行く各馬は馬場の真ん中から外に進路をとった。セイウンワンダーは外ラチいっぱいまで持ち出し、渾身の追い込みでグングン加速!各馬をまとめてかわして1着でゴールイン!!お前はシンザンか?というようなレースっぷりで重賞初制覇を飾った。
重賞を勝つと生産牧場にお祝いの電話や花が送られるが、セイウンワンダーの勝利を祝って多くのお祝いが西山牧場に送られた…西山牧場?
西山牧場といえばセイウンスカイなど、「セイウン」の冠名で知られる大馬主(母セイウンクノイチもここの所有馬)であるが、どうやら一部の関係者が、セイウンワンダーを西山牧場の生産・持ち馬と勘違いし、西山牧場にお祝いを送ってしまったそうだ。お祝いを送るときは馬主と生産者を確認しなくてはいけない(戒め)という教訓が生まれた(かどうかは知らない)。というかシャダイカグラの時に同じ勘違いを起こしている(社台の生産・持ち馬じゃないのに社台に祝福の電話が・・・)のでその教訓が生かされていないということに・・・
その後、脚のケガで一頓挫あったものの、12月のGI・朝日杯フューチュリティステークスに出走することになった。ブレイクランアウトに続く2番人気で出走し、内ラチ沿いを豪快に追い込み、後続の追撃も封じて1着でゴールイン。父グラスワンダーとの親子制覇を果たした。そして西山牧場にはまた花が送られてきたそうな。
朝日杯前日、鞍上の岩田騎手は他馬を落馬させ、翌週以降の騎乗停止処分を受けており、年末の有馬記念(アドマイヤモナーク)に騎乗できなくなってしまった。そのため、岩田騎手にとってこの朝日杯は2008年最後の大一番であり、見事に勝ち切ってみせた。このレース、彼が一番気合が入っていたのかもしれない。
朝日杯を勝ったことによりセイウンワンダーは2008年JRA賞最優秀2歳牡馬部門を受賞。4歳以上牡馬部門をスクリーンヒーロー(ジャパンカップ・アルゼンチン共和国杯)が受賞し、グラスワンダー産駒が2部門同時受賞となった。マルカラスカルが中山大障害で逸走しなければ3部門制覇もあったのでは…というのは言わないでおこう。
3歳 クラシックと三強と賞金
年が明け、セイウンワンダーはマイル路線ではなくクラシック路線に進むことになった。
初戦の弥生賞では+12キロと馬体を増やして参戦。無敗馬のロジユニヴァースと初対決になったが、ロジユニヴァースが悠々逃げ切った後方でセイウンワンダーは8着惨敗。距離不安説、ゴスホークケン並の早熟馬説が囁かれるようになり、クラシック参戦に暗雲が立ち込める。
この年のクラシックはロジユニヴァース(弥生賞)、アンライバルド(スプリングステークス)、リーチザクラウン(きさらぎ賞)の3強対決が注目され、セイウンワンダーはその蚊帳の外にいた。
なんとか2歳王者の意地を見せようと、皐月賞には-10キロで参戦。主戦の岩田騎手がアンライバルドに騎乗するため、内田博幸騎手と組んで出走した。「ここを無敗で勝てばシンボリルドルフ・ディープインパクト級」とマスコミに騒がれたロジユニヴァースは4コーナーで伸びず、競馬場が騒然とする中、馬群を抜けだしたのはアンライバルド、トライアンフマーチ、そしてセイウンワンダーであった。なんとか3着に入り、距離がこなせることを示した。
世代の頂点を極める日本ダービーは40年ぶりの不良馬場という最悪のコンディションで行われた。皐月賞3着が評価され、3番人気。鞍上は内田騎手がアプレザンレーヴに騎乗するため福永祐一騎手に変更。GI馬なのにコロコロと鞍上が変わるものだ。セイウンワンダーは今回も後方からレースを進め、直線での追い込みに賭けようとするも、伸びることが出来ず13着。先行したロジユニヴァース・リーチザクラウンがワンツーを決めた。
夏は休養に当て、秋は神戸新聞杯から始動。リーチザクラウン・アンライバルドとの勝負になると思われたが、レースは伏兵イコピコの末脚に屈し、2着リーチザクラウンを交わせず3着。
そしてクラシック最終戦菊花賞。セイウンワンダーは馬群の狭いところに入り苦しい競馬になったが、最後の直線で馬群を抜け、前を行くスリーロールス、フォゲッタブルに迫り、3着でゴール。夏の上がり馬2頭には屈したがリーチザクラウン、アンライバルドに先着し、最後の最後でなんとか雪辱を果たせた…のか?
この年の最終戦は有馬記念。ロジユニヴァース以外のクラシックを賑わせた面々や、同世代の女王ブエナビスタなど3歳馬が7頭出走。2009年3歳世代の真の頂点を決めるレースでもあった。そしてセイウンワンダーの父グラスワンダーが2勝した舞台、親子制覇に期待がかかる。
レースでは後方から進み、最後の直線で内に潜り込み前に迫ろうとするも結果は6着(1着ドリームジャーニー)。3歳馬の中ではブエナビスタ(2着)、フォゲッタブル(4着)に続いて3番目であった。以下イコピコ8着、リーチザクラウン13着、アンライバルド15着、スリーロールス競走中止と、3歳馬の中で明暗が別れるかたちとなった。
3歳時のセイウンワンダーの成績は[0-0-3-3]。皐月賞・菊花賞での3着は2歳王者としてまずまずの結果ではないだろうか…
しかし!3着じゃダメなんです(賞金的な意味で)。
レース出走馬を決める基準になる収得賞金は、重賞2着以上にならないと加算されず、この年セイウンワンダーは収得賞金を加算することが出来なかった。さらに4歳夏になると、賞金が半減するというルールがあるため、なんとか4歳夏までに重賞で2着・オープン競走で1着に入らねばならず、GI出走に黄色信号が灯りはじめた。
4歳 マイル再帰と最大の危機
クラシックが終わり、古馬になったセイウンワンダーはGII・マイラーズカップに出走した。朝日杯以来のマイル戦、リーチザクラウンもこのレースに出走し、ともに新たな一歩を踏み出した…が、4着で賞金加算に失敗。リーチザクラウンはちゃっかり1着であった。
次走はGI・安田記念。まあ重賞2つ勝ってるし賞金大丈夫だよね…しかし
安田記念除外
現実は厳しかった。安田記念は例年海外馬が参戦し、普段より出走馬枠が少なくなる。さらに賞金とは別に、レーティング上位5位の馬に優先出走権が与えられるが、それにも漏れ、泣く泣く翌週行われるエプソムカップ(GIII)に出走することになった。
安田記念の翌週ということもあり、マイルの強豪馬は出走してこない。ここはGI馬として負けられない。1番人気を背負い、最後はシルポート、キャプテンベガと接戦になったものの1着でゴール。朝日杯以来1年半ぶりの勝利を飾った。賞金ゲットオオオオオオオオオ!
これで弾みをつけ、春の総決算、宝塚記念に出走。賞金は依然として心細かったがファン投票16位、出走意思のある馬の中では8番目であったため出走可能であった。このレースで久しぶりにロジユニヴァースを目撃した。しかし中2週で距離も伸びたせいか16着大敗。
4歳秋は始動が遅れ、ぶっつけで天皇賞(秋)を目指すことになったが、ここでも賞金不足で出走が難しく、オープン競走のカシオペアステークスに出走するになった。出馬表が出て、あとは枠順確定を待つだけ…であったが、突然の出走取消、そして屈腱炎の発症がJRAから発表され、長期療養することを余儀なくされた。
療養の日々、そして引退
2010年11月から、セイウンワンダーは福島県にあるJRA競走馬総合研究所、通称「馬の温泉」で療養することになった。療養中に東日本大震災が発生したが、その後も馬の温泉に滞在し、2012年4月に馬の温泉を退厩。復帰を目指して調整が続けられていたが、調整中に屈腱炎を再発、2012年10月に無念の引退発表となった。成績も朝日杯くらいしか強調する所が無く、血統もノーザンダンサーとサンデーサイレンスの両方を持ち、自身が既にヘイルトゥリーズンの多重インブリードという非常に配合しにくい血統とあってか種牡馬としての需要はなかったのか、乗馬として第二の馬生を送ることになった。
血統表
*グラスワンダー 1995 栗毛 |
Silver Hawk 1979 鹿毛 |
Roberto | Hail to Reason |
Bramalea | |||
Gris Vitesse | Amerigo | ||
Matchche | |||
Ameriflora 1996 鹿毛 |
Danzig | Northern Dancer | |
Pas de Nom | |||
Graceful Touch | His Majesty | ||
Pi Phi Gal | |||
セイウンクノイチ 1998 青鹿毛 FNo.3-l |
*サンデーサイレンス 1986 青鹿毛 |
Halo | Hail to Reason |
Cosmah | |||
Wishing Well | Understanding | ||
Mountain Flower | |||
アンカースティーム 1988 青鹿毛 |
*リアルシャダイ | Roberto | |
Desert Vixen | |||
アイレテスコ | *テスコボーイ | ||
アイレバース | |||
競走馬の4代血統表 |
クロス:Roberto 3×4(18.75%)、Hail to Reason 4×4×5(15.63%)
- 父グラスワンダー×母父サンデーサイレンスはジャパンカップ馬スクリーンヒーローと75%同血統。
- 母母アンカースティームの子孫で他に目立つのはエルムS(GIII)2着、武蔵野S(GIII)3着のオメガレインボーくらい(2021年11月21日現在)。
- 日本有数の名牝系フロリースカツプ系に属しており、5代母サンマリノの全姉には天皇賞(秋)と有馬記念を制したガーネツトがいる。
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関連項目
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