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デノスマブ(Denosumab)とは、骨粗鬆症や悪性腫瘍などの治療に用いられる分子標的治療薬である。商品名はプラリア®(Pralia®)、ランマーク®(Ranmark®)。
概要
デノスマブは、ヒト型抗RANKLモノクローナル抗体である。アメリカ合衆国のバイオテクノロジー企業Amgenが開発し、日本では第一三共株式会社よりプラリア®やランマーク®の名で製造販売されている。薬価は、プラリア®が約3万円/筒、ランマーク®が約5万円/瓶。
RANKL(RANKリガンド)とは、破骨細胞および破骨細胞前駆細胞の表面に発現しているRANK(NF-κB活性化受容体)の基質である。骨芽細胞やT細胞などの細胞表面に発現している細胞膜型か、酵素によって切断された可溶型として存在し、破骨細胞の分化誘導、骨吸収機能、生存維持に関与する。
骨粗鬆症や悪性腫瘍の骨転移などでは、破骨細胞の活性化により骨吸収が異常に亢進している場合がある。デノスマブは細胞膜型ないし可溶型のRANKLと特異的に結合することにより、破骨細胞の分化や活性化を阻害して病的な骨吸収を抑制する。また、骨代謝回転抑制作用のほか、骨密度増加作用もあると目されている。
効能・効果 | 用法・用量 | |
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プラリア®皮下注60mgシリンジ | デノスマブ60mgを6か月に1回、皮下投与。 | |
デノスマブ60mgを6か月に1回、皮下投与。 ただし、6か月に1回の投与でも骨びらんの進行が認められる場合、3か月に1回の投与も可。 |
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ランマーク®皮下注120mg | デノスマブ120mgを4週間に1回、皮下投与。 | |
デノスマブ120mgを第1日、第8日、第15日、第29日に皮下投与し、以降は4週間に1回、皮下投与。 |
プラリア®の低カルシウム血症の患者への投与は禁忌。また、プラリア®とランマーク®はいずれも妊婦への投与が禁忌である。
重大な副作用として低カルシウム血症や顎骨壊死がある。低カルシウム血症の早期発見や症状軽減のため、ランマーク®投与の際は頻回の血液検査や十分な経過観察を行い、カルシウムおよびビタミンDを経口補充する。顎骨壊死は抜歯など顎の骨への刺激を伴う施術によって引き起こされやすくなるため、歯科治療は投与開始前に終えておくこと、痛みや腫れなどを感じたら早めに受診することが推奨される。また、プラリア®による治療中止後は、一過性の骨吸収亢進による骨折を予防する目的で骨吸収抑制薬を投与することがある。
なお、デノタス®は、デノスマブなどのRANKL阻害薬投与に伴う低カルシウム血症の治療や予防に用いられるカルシウム・ビタミンD・炭酸マグネシウム配合剤であるが、その商品名はデノスマブに足して服用することに由来する。
参考文献
関連項目
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