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トウカイローマンとは、1981年生まれの日本の元競走馬・繁殖牝馬である。
クラシックホースであるが、その後の歩みで色々な運命を変えた馬。そのせいかクラシック勝利があまり語られない馬。
主な勝ち鞍
1984年:優駿牝馬(GI)
1987年:京都大賞典(GII)
概要
血統背景
父*ブレイヴェストローマン、母トウカイミドリ、母父*ファバージという血統。父は米国からの輸入種牡馬で、二冠牝馬マックスビューティや桜花賞馬オグリローマンなどを輩出し成功。母は4戦1勝。5代母にはダービー牝馬ヒサトモがおり、すなわち下総御料牧場の基礎牝馬の1頭である星友の牝系である。母父はアイルランドからの輸入種牡馬で、現地での産駒に凱旋門賞馬Rheingoldがいる。日本では皐月賞馬ハードバージが代表産駒。
なお、本馬の祖母トウカイクインは「トウカイ」の冠名でおなじみの内村正則が初めて所有した馬である。
3歳～4歳春
3歳11月にダートでデビューし2着。翌月に折り返しの新馬戦で初勝利を挙げる。
4歳初戦から条件戦を1着、2着と好走しクラシック戦線に進んだが桜花賞トライアルのOPチューリップ賞はウラカワミユキ(ナイスネイチャの母)の8着。桜花賞は18番人気(21頭出走)の低評価だったが、中団から直線真ん中を突いてしぶとく残し4着に食い込む。
オークスは9番人気。25頭立ての3枠9番というまずまずの枠をもらったトウカイローマンは桜花賞より前目の7番手を追走する競馬を選択。59秒3という比較的速いペースで流れ、早々に前が崩れたところでトウカイローマンは一旦位置を下げたが、3，4コーナー中間で進出を開始し、5番手で直線を向く。前は4頭横一線の状態から坂の上りで桜花賞馬ダイアナソロンが外を抜け出したが、真ん中から伸びてきたトウカイローマンがかわして先頭に立ち、追いすがるダイアナソロンを1馬身1/4振り切って勝利。馬主の内村、鞍上の岡冨俊一、調教師の中村均に初のGI勝利をもたらした。
4歳秋～6歳
休養明けの秋。当然二冠を目指したのだが、トライアルで5着6着と惨敗し、本番のエリザベス女王杯(当時は4歳限定戦)も4着。その後も2戦して勝てず4歳シーズンを終える。
5歳になっても連敗は止まらず、OP特別やローカル開催、さらにダートにも活路を求めたが3着がやっとという成績。結局6戦全敗で5歳も終えてしまう。
6歳シーズンも現役を続行し、3戦目のOP特別でオークス以来丸2年ぶりの勝利を挙げる。しかし続く高松宮杯で11着と惨敗し、あげく深管骨瘤で長期休養を余儀なくされる。高齢もあって所有する内村は繁殖入りを考え始めたが、まだ重賞を勝てる力はあると見込んでいた調教師の中村が頼み込んでもう1年現役を延長することになった。
7歳
結局回復には10ヶ月を要し、7歳となった翌年4月に戦列に復帰。OP特別で僅差の5着に敗れる。この時シンボリルドルフの種付け株を取得していた内村は、ルドルフと「同期のダービー馬×オークス馬」の交配を実現させることを計画。繁殖時期も考慮し、事実上の引退レースとして5月の新潟大賞典に出走することになった。
しかしこのレースでトウカイローマンは2着に激走(勝ったのは同期の牝馬セッテジュノー)。この好走を見た内村は引退を撤回。この決断が時代を動かすことになる。
現役を続行したトウカイローマンだが、OP特別で2着、七夕賞は4着と惜しい競馬に逆戻りしてしまう。次走には小倉記念への転戦が決まり、ここで調教師の中村はこの年に迎えた大崎昭一からの乗り替わりを決断する。しかも新人騎手に。その騎手は小倉記念の前週までに37勝と、新人勝利記録を塗り替えんばかりの勢いで勝ち星を量産していた。中村が「スターになる雰囲気がある」と評し、ローマンを変えられると見込んで騎乗依頼を出したその騎手の名は武豊。運命が動き出す。
小倉記念はトウカイローマンの体調が整わず5着。続く京都大賞典も中村が内村に頼み込んで武豊を続投させる。10頭立てから本命サイドのランドヒリュウが取り消して9頭、メンバーも薄いながら6番人気にとどまる。7歳牝馬で勝利は1年半前、さらに57kg背負っていては致し方ないか。
4番枠から発走したトウカイローマンは4番手を追走。レースは62秒後半のスローとなったが人馬とも落ち着いて進み、直線で大外に持ち出されると力強く進出し先行馬を置き去りにしていく。最内の1頭が差し返しを図ったが、これも半馬身退けてゴールイン。オークス以来実に3年半ぶりの重賞制覇を果たした。そして鞍上のルーキー武豊はこれが年間44勝目にして自身初の重賞勝利。ここから30年以上の長きにわたって続く武豊の連続年重賞勝利の記録が始まっていったのである。なお、その後武豊は京都大賞典を9勝しており、これは2022年現在JRA騎手としての同一重賞最多勝記録である。京都外回りが得意なのは昔からだったのか･･･。
その後ジャパンカップ、有馬記念と大舞台に挑戦したがともに11着に敗れ、この年いっぱいで引退。ラストランの有馬記念に出走したことで、ヤマノシラギク以来となるJRA全10競馬場出走という記録を打ち立て華を添えた。通算30戦5勝。
引退後
繁殖牝馬としては、初年度にシンボリルドルフとの交配が実現したものの産駒は未勝利。その後も活躍馬は現れず、2007年に現26歳で死亡した。繁殖入りできた牝駒3頭しかいなかったが、牝系はなんとか続いているようである。
帝室の運命を変えた馬
さて、武豊という騎手の運命を変えたトウカイローマン。実はある馬の運命も変えていた。
話は遡って、7歳春。新潟大賞典で2着となり現役続行が決まったトウカイローマン。これでこの年の繁殖入りがなくなり、所有する内村がローマン引退を見越して取得していたシンボリルドルフの種付け株が宙に浮くことになった。そこで内村は、代役としてローマンの1歳下の半妹で、脚元に難を抱え未出走のまま繁殖入りしていたトウカイナチュラル(父*ナイスダンサー)をルドルフの交配相手に選定。そして翌年生まれた牡馬こそ、1991年の二冠馬にして日本競馬史上屈指のドラマチックな生涯を送った名馬トウカイテイオーである。
トウカイローマンが新潟大賞典で引退していたらルドルフの種付け相手に選ばれていたはずで、トウカイナチュラルは代役とならず、トウカイテイオーも生まれていなかったかもしれない。トウカイローマンの2着が競馬史の転換点となったのである。
血統表
| *ブレイヴェストローマン Bravest Roman 1972 鹿毛 |
Never Bend 1960 鹿毛 |
Nasrullah | Nearco |
| Mumtaz Begum | |||
| Lalun | Djeddah | ||
| Be Faithful | |||
| Roman Song 1955 鹿毛 |
Roman | Sir Gallahad III | |
| Buckup | |||
| Quiz Song | Sun Again | ||
| Clever Song | |||
| トウカイミドリ 1977 鹿毛 FNo.19-b |
*ファバージ 1961 鹿毛 |
Princely Gift | Nasrullah |
| Blue Gem | |||
| Spring Offensive | Legend of France | ||
| Batika | |||
| トウカイクイン 1966 鹿毛 |
*アトランティス | Milesian | |
| Atlantida | |||
| トツプリュウ | *フアイナルスコア | ||
| ブリユーリボン | |||
| 競走馬の4代血統表 | |||
クロス：Nasrullah 3×4(18.75%)、Blenheim 5×5(6.25%)
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関連項目
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