概要
スーパースポーツやネイキッドのようなバイクのジャンルの一つ。代表車種はホンダ・スーパーカブやヤマハ・ギアなど。明確な定義は無く、ネイキッドじみたスタイル(ホンダ・CDシリーズ)やスクータータイプ(ヤマハ・ギア)であったり、そもそも三輪であったり(ホンダ・ジャイロ)と幅は非常に広い。また、荷台を持ってないモデルも数多く存在し、特にネイキッドとの区別は曖昧である。ただ一つ共通している事は、彼等は皆押し並べてタフであり、使い潰されるその日まで、黙々と酷使に耐える事が出来る車両であるという事。
その名の通り、元々趣味としての用途や移動手段としての用途を目的として作られた物ではなく、ドライバー+荷物を運ぶ事を目的としている。その為、後部に大型の荷台(キャリア)を装備している場合が多い。勿論原付二種以上に分類されるモデルは二人乗を可能とする為にリヤステップを供えている事が多いが、リヤシートはキャリアの上に取り付ける形態となり易い。
そもそもビジネスバイクは、例え雨が降ろうと雪が降ろうと、目の前が非舗装路であろうと進む事を宿命付けられたバイクと言える。雨が降っていても蕎麦やピザが家まで届かねば困るのであるし、例え雪の日であろうとラブレターは配達されなくてはいけない。、もしかしたらビジネスバイクが運ぶ天丼こそが子供の誕生日のメインディッシュなのかもしれないし、荷台の箱の中に入っている手紙は親友の結婚式を知らせようとしているかもしれない。ビジネスバイクは社会のインフラの一部を担う物なのである。
その為には一々細かい故障で稼働率が下がるなどという事は以ての外、有ってはならない事なのだ。であるからこそ、ビジネスバイクは一般的にタフさを信条としたエンジン+冒険を避け枯れた構成のフレーム+多少の悪路でも突き進む為の大径タイヤという構成を取っている事が多い。かつてのネイキッド型ビジネスバイクはレッグシールドをオプションで装備する事が出来た物も多く、古めかしいデザインの車体左右にマウントされたレッグシールドは、強烈に「働くのりもの」を主張していた。尤も、今日の日本では都市部の道路は舗装され水掃けも良くなっている為、大径タイヤについては供えていないモデルが増えてきた。排気量も50~125ccクラスが9割以上を占めているが、そもそもビジバイは都市の中を行ったり来たりする用途が基本である為、都市間交通網である高速道路の使用を考慮する必要性が著しく低いという状況に基いている。昨今マニュアルトランスミッションのビジバイは消滅しかけている。
ビジネスバイクラインナップ(生産終了車種も含む)
ホンダ
スーパーカブシリーズ
スーパーカブと言えば正にビジネスバイクの王様。1958年に発売されて以降、日本の生活には必ずこの車両の姿がある。扱い易く必要十分な性能を持ちながら、驚異的なタフさと燃費を誇る4ストロークエンジン、セミオートマチックトランスミッションに支えられた簡単な運転、雨/風/泥からドライバーを守る見事なレッグシールド、過積載にも耐える頑丈なフレームとキャリア等々、ロングセラーになるには理由がある。伊達に最も素敵な人達が乗るバイクではない。
詳しくは該当の記事を参照の事。
CDシリーズ
ホンダのビジネスバイクラインナップにおいてスーパーカブと並んで存在していたもう一つの系譜。2013年現在では日本向けにCDの型番を持つバイクは製造されていないが、かつて日本ではCD50、90、125、250Uと4種類のラインナップがあった。尚、パキスタン等ではCD70などCDの系列の製造が続いている。スーパーカブとは異なりよりネイキッドバイクに近いフォルムに、マニュアルのトランスミッションを装備していたのが特徴。尤も、CDの系列の中でもロングシートで荷台を持たない等ビジネスバイクとは呼べない車種も多く存在している為、CD系列=ビジネスバイクと括る事は難しい。とはいえ、上述の通りビジネスバイクの定義自体厳密な物が存在しない為、便宜上ここではCD系列を全てビジネスバイクと見なし、列挙する。尚、CD50やCD125T等はベンリィと呼ばれる事も多いが、CDの型番を持つバイクが全て"ベンリィ"の名前を持っているわけではないし、"ベンリィ"の名前を持つバイク全てがCD系列というわけでもない。
- CD50
50ccのモデルで、1968年より生産が開始され、2007年までCDシリーズ生産終了というシリーズ最長の生産年月を持つ。プレスバックボーンフレームにスーパーカブ50と共通のエンジンを組み合わせており、CD50Sという荷台を排したモデルや、アップマフラーを持つCL50といった派生モデルがある。フレーム等の基本コンポーネントはCD65、70、90に展開された。 - CD65
CD50と共通のフレームを持つCD。タイに輸出された。 - CD70
CD50と共通のフレームを持つCD。パキスタンのAtlas Hondaが現在も生産中。排気量72cc。2013年現在で赤と黒の2カラー展開がされている。Atlas Honda生産のバイクにはフレーム共通で外装を近代化し、装備を豪華にしたCD Dreamも存在する。 - CD90
CD50と共通のフレームを持つCD。国内で販売されたCDシリーズの一つ。 原付二種扱いだが見た目は殆んどCD50と変わらない。CD50との最大の違いはリヤにパッセンジャー用のステップがある事。 - CD125
国内で販売されたCDシリーズの一つ。1966年発売。下記のCD125Tとはフレームもエンジンも異なる別車両。(125はTボーンフレーム、125Tはダイヤモンドフレーム) CB125、CL125とフレーム共通。 - CD125T
国内で販売されたCDシリーズの一つ。CB125Tと共通のフレームを持っており、上記のCD50系とは見た目が大きく異なる。シルバーのタンクに黒い前後のフェンダー、お弁当箱のようなメーターが目印。エンジンもCB125Tと共通だが、360度位相クランクとなっている為挙動は「単気筒エンジン二つが同時に爆発している」状態に近い。キャブレターもツインキャブを積んでいたCB125Tに対してシングルキャブとなっている。
尚、郵政モデルとしてCD125T-MDという赤いモデルが存在し、異常なまでに巨大なキャリアが郵政速配便向けオプションとして存在した。CD125T-MDはシートがベージュであったり、フロントブレーキレバーを引きっぱなしにできるストッパーがついていたりと変更点が多い。エンジン/フレーム共通のCM125Tというアメリカンの車両が存在する。 - CD175
CD125Tと共通のフレーム/装備を持つCD系列。1967年販売開始。CB175及びCL175とコンポーネントを共用する。 - CD185T
CD125Tと共通のフレーム/装備を持つCD系列。少なくとも1970年代末にはイギリスで販売されていた模様。サイドカバーは古いCD125Tが装備していたフェイクエアインテーク形状の物だが、文字がCD185になっている。 - CD200 Road Master
最近まで南アフリカ及びパキスタンで生産されていたCD。CD系列としては珍しくRoad Masterというペットネームを持つが、過去には英国向けに"CD200 Benly"という名前で販売されていたようだ。2004年から2005年頃までは生産されていたようで、フレーム等はCD125Tと共通。サイドカバーはCD185と同じく旧CD125Tの物と共通となっており、文字だけがCD200に変更されている。フレームが共通のアメリカン、CM200T "Twin Star"が存在する。 - ホンダドリームCD250
1968年発売。総排気量249ccの直立二気筒エンジンをセミダブルクレードルフレームに持つ。下記のCD250Uとはフレーム、エンジン、その他諸々全て異なる別車両。ドリームCB250のビジネスバイク仕様である。日本で発売された車両としては非常に少ない高速道路を走れるビジネスバイクの一つ。 - CD250U
1988年発売。CD125Tと共通の(=CB125Tとも共通の)ダイヤモンドフレームにアメリカンの250T用に開発された233ccエンジンを積んだ上でツインキャブに変更し、タンク、シート、サイドカバー、キャリア、前後フェンダー、そしてスイングアームを専用部品としている。スイングアームはCD125Tの物よりも延長されており、その為CD125Tと比べるとフレームが共通であるにも関わらず車体の全長が長い。排気量の為かビジネスバイクとしては珍しく前輪がディスクブレーキになっている。
あまり売れなかった事もあり非常にレアな車両となっているが、英国や北米にも輸出されていた。又、後々レブル等にも展開されたエンジンである為、部品の供給も比較的潤沢。大抵のパーツがCD125Tと共用できるが、実は同じように見えるキャリアは取り付け穴が異なっている為に専用部品扱いである。計器は二眼メーターに見えるが、右側はただのインジケーター類用のケースであり、ニュートラルランプ、ウィンカー、High/Lowビーム、速度警告灯(85km/h以上で点灯)の4つしか無い。高速道路を走れるビジネスバイクの一つだが、250ccのビジネスバイク自体普及したとは良い難く、走っている姿を見かける事は難しい。
その他
- ジャイロシリーズ
ホンダが誇る三輪 ビジバイ。スクーターに対してタイヤ3つの為スリーター等とも呼ばれる。3輪の安定性、原付免許で乗れる手軽さ、そしてリヤの積載性と恐しい程に優秀なデザイン。その為1982年の発売依頼大きなデザインの変更が行なわれていない。 - ベンリィシリーズ
ヤマハのビジネス用スクーター"ギア"に対抗してホンダが送り出したビジネス用スクーター。かつてホンダのバイクに広く与えられ、特にCDシリーズが背負った時期が長かった為に、カブと並ぶビジネスバイクのタイトルとして知られたベンリィの名を継ぐ。けして速度は出ないが、低くどこまでもフラットな荷台が荷物を運ぶ時には有り難い。50ccと110ccの2モデルが存在する。
ヤマハ
SRシリーズ
- SR125B
2000年発売。同社の125ccアメリカンであったSR125に追加されたビジネスバイクのタイプ。レッグシールドに荷台付きであり、元がアメリカンとは思えないビジネスバイク感を醸し出す。前後ドラムブレーキであったCD125Tに対して、フロントがディスクブレーキである事、エンジンが単気筒である事が大きな相違点。
YBシリーズ
YDシリーズ
- YD125
- YD250
ヤマハの250ccビジネスバイクで、1986年販売開始とホンダのCD250Uよりも先発。CD250Uとの最大の違いは単気筒に角型ヘッドライトという組み合わせで、エンジンはSR250の物。非常に大型のキャリアを持ち、メーターに時計や燃料計があるなどCD250Uと比較しても豪華な装備を持つが、前後はドラムブレーキ。高速道路を走れるビジバイの一つ。CD250U共々250ccのビジネスバイクというコンセプト自体があまり受けなかったせいもあり、姿を見かける事は少ない。
メイトシリーズ
ヤマハの誇るビジネスバイクシリーズの一系統。スーパーカブを意識したかのようなアンダーボーンフレームにレッグシールドを備える。カブとは異なり2ストロークエンジンを搭載するVメイト系列と、4ストロークを搭載するTメイト系列の2系統があった。複数の排気量に渡ってシリーズ展開されたが、その中でも特にタウンメイト80はビジネスバイクながら4ストロークエンジンにシャフトドライブを組み合わせるという非常に独創的かつタフな作りをしていた。カブとの識別点は妙に目立つヘッドライト。
ギア
1994年販売開始のビジネス用途向けスクーター。現在では運転の簡単さなどから旧来スーパーカブが独占していたような用途に食い込みつつある。対抗としてホンダは新型ベンリィを発売した。
スズキ
バーディーシリーズ
スズキのビジネスバイクシリーズの一系統。1973年販売開始とホンダ・スーパーカブ、ヤマハ・メイト、スズキ・バーディーのアンダーボーンビジネスバイク系統としては最後発。カブと同じく50cc/90ccが国内では展開されたが、現在では50ccのみが生産されている。新聞バーディーや重荷用バーディーといった、名は体を表す式の命名が多い事が特徴。
Kシリーズ
スズキのビジネスバイクシリーズの一系統で、マニュアルトランスミッションを装備しているモデル。ホンダのカブに対するCD系列、ヤマハのメイトに対するYB/YD系列に相当する。K50、K90、K125の三排気量でラインナップされており、全種類で2ストロークエンジンであった。1960年代から2000年代までフルモデルチェンジが一切行なわれず、そのまま生産終了となった。
関連動画
関連項目
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