ポンジ・スキーム (英:Ponzi scheme)とは、古典的な投資詐欺手法である。古典的ではあるのだが、現代でも通用しうる詐欺手法でもある。
概要
ポンジ・スキームの名はこの方法を利用して多くの金をせしめた、チャールズ・ポンジ(Charles Ponzi)に由来する。ポンジはイタリア人だったがアメリカに渡り、90日で40%の利回りが可能との触れ込みで出資者を集めて、数百万ドルの大金を集める。しかし彼はその運用をせず、自転車操業的に出資者の配当に充てるのだ。こうすることで、以前からの出資者は「運用が成功している」と信じてくれるので、更に出資金を集められ、また口コミなどで他の人にも出資を促してくれる。これは続けていけば破綻が見えているのだが、上手いタイミングで撤退すれば一人勝ちとなる。つまり出資を募るも運用をほとんど、またはまったくせず、見た目上うまく行っているように見せてより高額の金を集めたところで最終的にドロンするのがポンジ・スキームというわけだ[1]。
この手法では後から入ってきた人、それこそ最後の方の人は配当をほぼ、あるいは全く得られない。故にポンジ・スキームの呼び名があまり知れ渡っていない日本では「ネズミ講のようなもの」と訳されることも多いが、上記のように手法そのものはかなり異なる(まあ、騙された人が大損こくという意味では同じだが)。
ポンジは1920年代に活躍(といっていいのかわからないが)した詐欺師なのだが、2000年代に入ってもバーナード・マドフというユダヤ人の男[2]が5-6兆円もの規模の詐欺をやらかしている。マドフは個人で行ったポンジ・スキームで世界一の詐欺被害を生じさせたともされている。この背景には、マドフがユダヤ人コミュニティに顔が広いためにとんでもない額の金を集められたからとも言われている。
現代でも詐欺のほとんどはポンジ・スキームであるとされており、一般的な手法ながら理屈付を「カーシェアリング」だの「ビットコイン」だのと紐づけることで今日も多くの詐欺被害が生まれている。
日本でのポンジ・スキーム
……と、日本ではポンジ・スキームが知られていないとばかり述べてきたものの、手法の名前が知られていないだけで別に日本でもポンジ・スキームによる詐欺被害は度々起こっている。日本人で詐欺被害といえばネズミ講ばかりが取り上げられるが、そもそも投資というのは意外と投資対象のやっている事業に対して明るくない人たち、それこそ「投資をしたら最後、うまく行っているか確認しない」人が多いので、度々詐欺師が跋扈するのだ。
オレンジ共済組合事件 (1992-1996)
旧新進党所属の友部達夫参院議員の政治団体が運営する、オレンジ共済組合が起こしたポンジ・スキーム。オレンジ共済組合はオレンジスーパー定期という年に6-7%もの高配当を謳った投資商品を販売し、約93億円もの金を集めたものの、その実態は一部を配当に回し、借金返済や行きつけのスナックでの遊興費などに費やされていた。最終的に1996年に破綻し、組合員は大損をこいた。
円天事件 (2001-2007)
株式会社エル・アンド・ジーが円天という疑似通貨を発行。この円天は預けた額と同額の円天を毎年受け取れる、年利100%などとされ、更にこの円天を支えるためとして元本保証をしたうえで「100万を預ければ3ヶ月ごとに9万円を支払う」として会員から協力金を集めた。
無論こんなうまい話があるわけもないのだが、演歌歌手等を招待した無料コンサートを行うことで、信用を集め、多くの会員を獲得した。しかしやっぱり2007年ころ破綻し始め、最終的に社長の波和二は逮捕された。なお、マルチではないのだが「新規会員を紹介すると報酬が出る」などマルチっぽい要素もある。これはもともと波が「APOジャパン」というマルチ商法の会社を経営していたからであろう。
安愚楽牧場事件 (1982-2011)
安愚楽牧場が和牛オーナー制度で出資金を集め、7万人超の詐欺被害者と4207億もの詐欺被害を齎した事件。ただし当初こそ共済としての役割が強かった。投資商品として成立したのはバブル崩壊後であり、和牛が相対的に利率の良い商品となったのを期に性質が変わっていった。
ついでにいえば、安愚楽牧場は一応きちんと牛は育ててはいたし、肉をちゃんと販売もしていた。しかし、投資の対象となる牛の頭数に対して実際の頭数が少ないなどの出資詐欺や、最終的に出資金をそのまま配当にするなどのポンジ・スキームに陥っており、2011年の東日本大震災で会員が減ったのを期に立ちいかなくなり、破綻することになった。
関連動画
関連リンク
-
史上最大のネズミ講詐欺師 マドフ受刑者死去: 日本経済新聞
- 上記の通り、マドフが行ったことはポンジ・スキームであり、ネズミ講ではない。
- 【衝撃事件の核心】「豊田商事」上回る最悪被害「安愚楽牧場」、日本を詐欺天国にしてしまった農水省と消費者庁の罪(1/5ページ) - 産経ニュース
- 猛威を振るう投資詐欺、「ポンジ・スキーム」の悪辣手法(ハーバー・ビジネス・オンラインより) | 会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)
関連項目
脚注
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