地雷グリコ単語

ジライグリコ
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 ジャンケン。階段。でも知っているシンプルゲーム
 小学校記憶が甦る。帰り道。休み時間。公園学校友達と何度も遊んだ、あのゲーム
「それって、もしかして……」
グリコか」が嬉しそうに言った。「なつかしいね」
「くだらないな」と、先輩。「子どもの遊びじゃないか」
「いいんじゃないか?」と、江先輩。「もともとくだらない勝負だし」
 私たちの反応を予想していたように、塗辺くんは階段を見上げる。
「ただのグリコではありません。この階段、危険極まりない〝地雷原〟でもあります。踏んでしまえば重いペナルティが。勝つためには互いに読み合い、敵が仕掛けた地雷の位置を察知しなければなりません」
地雷?」
 審判はうなずいて、私たちを振り返り
「いかにを見極めつつ、いかに素く階段を上るか――。ゲーム名」口元を陰気に綻ばせた。「《地雷グリコ》です」

――青崎有吾『地雷グリコ』単行本(KADOKAWAP15-16より

『地雷グリコ』とは、青崎有吾の特殊ゲームバトル小説、およびそれに登場するゲーム

第24回本格ミステリ大賞、第77回日本推理作家協会賞、第37回山本周五郎賞受賞作。

あらすじ

都立高校文化祭祭」には、ひとつ奇妙な習があった。一番人気の出店スペースである屋上の使用権を巡って、希望する団体同士が平和的かつ明確な勝敗がつく何らかの勝負において対戦するトーナメント《愚煙試合》が開催されるのである。

決勝戦に勝ち残ったのは、カレー店を希望する1年4組と、過去2年続けて屋上使用権を獲得しているオープンカフェ希望生徒会。1年4組の女子生徒守矢(いもり) (まと)と、生徒会代表の(くぬぎ)(はやと)屋上の権利を賭けて戦うことになったのは、もが知るあの階段を使う「グリコ」のゲームに新たなルールを追加した「地雷グリコ」だった――。

百人一首を使った神経衰弱坊主衰弱」、独自手を追加したジャンケン自由ジャンケン、歩数と振り向くタイミング事前に入札するだるまさんがかぞえた」、4部屋せられた52枚のトランプを消費していくフォールーム・ポーカー。射守矢が挑む5つのゲーム論理と駆け引きが勝利を導く特殊ゲームバトル

収録作

概要

2023年11月KADOKAWAから刊行された、青崎有吾の短編連作集。
学園ものアンソロジー読み切りとして掲載される予定が、アンソロジー企画がポシャったため2017年角川書店の電子文芸誌「小説Sari-Sari」に掲載された短編「地雷グリコ」を編集者の勧めでシリーズ化し、2023年まで断続的に発表された4編に書き下ろしを追加して単行本化された。なお、当初はミステリーランキング年度末までに刊行する予定だったが、書き下ろしの原稿が間に合わなかったので11月刊になったのだそうな。

グリコ坊主めくり神経衰弱ジャンケンだるまさんがころんだポーカーと、それぞれもがルールを知っているゲームに対して新ルールを追加し、頭戦を繰り広げる特殊ゲームバトル小説。著者が「迫稔雄『嘘喰い』が世界で一番好き」る通り、様々なギャンブル漫画を強く受けており、各編とも熾な頭戦と騙し合いが繰り広げられる。
この手の特殊ゲームものはルール説明が煩雑になりがちだが、本作はでもおなじみのゲームアレンジであるため染みやすく、作中での説明が非常に手際がいいのと、解説役のキャラが新ルールで生じるゲームの変化やパッと思いつく定石をすぐに挙げてくれるため、読者ゲーム内の駆け引きの見所や、定石を上回る作中の騙し合いと頭戦を理解しやすくなっている。

第1話「地雷グリコ」は、第2話「坊主衰弱」の開時にカドブンにて全文公開されておりexit、単行本化された現在も全文を読むことができる。

公式あらすじや帯にも「ミステリ」の文字は全く使われていないが、その特殊なルールに基づいた理詰めの頭戦と騙し合いの面さはミステリ界でも非常に高く評価され、第24回本格ミステリ大賞ぶっちぎりの得票数(31票、2位白井智之エレファントヘッド』は13票)で受賞。続いて第77回日本推理作家協会賞長編及び短編連作集部門ダブル受賞した。本ミス大賞推協賞ダブル受賞は、小説では6例[1]さらには第37回山本周五郎賞を受賞し、ミステリの外においても評価された。他に2023年SRの会ミステリーベスト10でも1位を獲得。
このミステリーがすごい!」「週刊文春ミステリーベスト10」「本格ミステリ・ベスト10」「ミステリ読みたい!」の四大ミステリーランキングでは12月発表の2024年度の対となるため、まだまだ冠が増える可性はある。今後、青崎有吾の代表作となることは間違いないだろう。

主な登場人物

守矢(いもり)(まと)
都立高校1年生。勝負ごとにやたらと強い。
鉱田(こうだ)
クラスメートで中学時代からの友人。基本的に本編り手を務める。
(くぬぎ)(はやと)
高校3年生の生徒会役員。「地雷グリコ」で対決し、その後は解説役を務める。
佐分利(さぶり)錵子(えこ)
高校生会長を手元に引き込むために「自由ジャンケン」でと戦う。
季田(うきた)(えそら)
高校1年生中学時代の友にして最大の強敵。
塗辺(ぬりべ)
祭実行委員。「地雷グリコ」「フォールーム・ポーカー」の考案者。

登場するゲーム

地雷グリコ

  • 基本ルールは一般的な「グリコ」と同じ。「グーリーコ」の掛けとともにジャンケンをし、グーで勝てば「グリコ」で3段、チョキで勝てば「チヨコレイト」で6段、パーで勝てば「パイナツプル」で6段、それぞれ階段を上がることができる。
  • 階段の段数はゴールを含めて46段。
  • ゲーム開始前、参加者は階段内の3つの段に地雷を仕掛ける。設置できる時代は1段につき1つまで。スタート地点とゴール地点への設置は不可。どの段に地雷を仕掛けたかは審判にのみ伝える。希望が被った場合はその段数のみ表して再設定。
  • 対戦相手が、自分の設定した地雷の段で止まった場合、相手は10段下るペナルティを受ける。10段以下で地雷を踏んだ場合はスタート地点に戻る。
  • 自分が設定した地雷の段で止まった場合、「ミス」となり、下るペナルティは受けないが、その段に地雷があることが相手にバレる。
  • 同じ手による「あいこ」が5回連続した場合、立っている位置がゴールに近いプレイヤーの勝ちとなり、3段か6段、好きな段数を選んで進むことができる。同じ段にいる場合は先にその段に到達した方が「ゴールに近い」と見なす。

坊主衰弱

  • 百人一首の絵札を用いた神経衰弱
  • せた札を交互に2枚ずつめくり、〈男〉同士か〈〉同士でペアをえると自分の手札に加え、もう2枚めくるボーナスを獲得できる。ボーナスは1回まで。
  • 坊主〉をめくってしまった場合、その時点で持っている手札を全て捨て場に送らなければならない。2枚めくるうちの1枚が〈坊主〉だった場合、その時点で自分の手番は強制終了となり2枚をめくることはできない。
  • 〉でペアをえたときは、その時点で捨て場にある札を全て自分の手札とすることができる。
  • これを全ての札がなくなるまで繰り返し、最後に手札が多かった方の勝利。〈〉が1枚余るので、それは最後にめくった人の手札となる。
  • 丸は〈坊主〉扱い。

自由律ジャンケン

  • 7回勝負のジャンケン。先に4勝した方の勝利
  • グー・チョキ・パーに、プレイヤーが考案した〈独自手〉2種を加えた5種類の手を用いる。
  • 〈独自手〉の形は片手で出すことができ、の折り曲げだけで作れるものであること。名前は形に連動していればなんでもOK。
  • 自分の〈独自手〉には、グー・チョキ・パー+相手の独自手の4種に対して、どれに勝ちどれに負けるかを設定する。ただし「全ての手に勝つ」は禁止で、最低1種には負ける設定であること。
  • それに加えて、〈独自手〉には自由に特殊効果をつけることができる。条件が複雑すぎる効果や強すぎる効果は禁止だが、OKかどうかの判断は審判に委ねられる。
  • 〈独自手〉の強弱がかちあった場合は〈あいこ〉となる。
  • 自分の〈独自手〉の強さおよび特殊効果は審判にのみ開示され、対戦相手には開示されない。
  • 手の形を間違えた場合は〈空手〉扱いとなり、無条件で相手の勝ちとなる。

だるまさんがかぞえた

フォールーム・ポーカー

関連リンク

関連項目

脚注

  1. *過去5例は、山田正紀ミステリオペラ』(2002年)、歌野晶午葉桜の季節に君を想うということ』(2004年)、麻耶雄嵩隻眼少女』(2011年)、櫻田智也『蟬かえる』(2021年)、芦辺拓『大殺人事件』(2022年)。
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1 ななしのよっしん
2024/05/11(土) 08:55:04 ID: f+Bc8ivhlD
お菓子グリコはまったく関係かった
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2 ななしのよっしん
2024/05/22(水) 08:15:51 ID: f+Bc8ivhlD
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