幽世の薬剤師(かくりよのやくざいし)とは、紺野天龍によるミステリー小説シリーズ。
あらすじ
薬剤師として働く空洞淵霧瑚は、自身が専門とする漢方と現代医療の狭間で苦悩していた。
そんなある日、病院からの帰り道で不思議な少女に出会う。――気が付けば、そこは携帯の電波も届かぬ異界であり、さらに、謎の感染現象に苦しむ人々が溢れていた。
これは病か。あるいは、怪異か。現役薬剤師が描く漢方×異世界×医療ミステリー、開幕!1巻裏表紙より
概要
2022年3月から新潮文庫nexで刊行されている、紺野天龍による漢方×異世界×医療ミステリー小説シリーズ。イラストはこより。2024年2月刊の6巻で第一部が完結。
漢方薬剤師の青年が、この世界の裏側にある、現世から排斥された存在の楽園である異世界〈幽世〉に迷い込み、巫女さんに保護されて〈幽世〉の賢者の庇護のもと、異世界で起こる怪異に漢方と医療の知識を駆使して立ち向かう話。作者の紺野天龍は現役薬剤師である。
医療ミステリーであり、同時に〈幽世〉のルールに基づいた特殊設定ミステリでもある。キャッチコピーなどでは「転生」の文字が使われているが、内容的には幻想入り異世界転移ものと言った方が正しい。
一部の読者には世界観と設定と登場人物に何かものすごく見覚えがあるような気がするだろうが、きっと気のせいである。
主な登場人物
- 空洞淵霧瑚
- 月詠によって〈現世〉から〈幽世〉に導かれた漢方薬剤師の青年。28歳。現代医療における漢方の立場と役割について悩んでいたが、現代医療のない〈幽世〉に連れて来られたことで、漢方の知識を駆使して綺翠とともに怪異に立ち向かうことになる。
- 御巫綺翠
- 空洞淵を保護した御巫神社の巫女。20歳。怪異を祓う力を持つ〈破鬼の巫女〉で、霊刃〈御巫影断〉を武器に怪異と戦う。一見クールで無愛想だが、単に感情表現が苦手なだけ。無口ではないが言葉が足りないことが多い。博麗霊夢。
- 御巫穂澄
- 綺翠の妹。15歳。空洞淵のことを「お兄ちゃん」と呼んで懐く天真爛漫な少女。料理の腕もピカイチで、御巫神社の家事を任されている。重度の恋愛脳で、何かと空洞淵と綺翠をくっつけたがる。
- 金糸雀
- 〈現世〉から〈幽世〉を切り離した〈国生みの賢者〉にして、800年以上生きている〈八百比丘尼〉の根源怪異。〈大鵠庵〉という屋敷に暮らし、滅多に人里に出てくることはない。山吹色の髪をし、額の第三の眼で〈幽世〉のことを見通す能力を持っているが、妹の月詠絡みのことだけは上手く観測できない。空洞淵のことを「主さま」と呼び、〈幽世〉での空洞淵の後見人的な立場を務める。八雲紫+古明地さとり。
- 銀月詠
- 金糸雀の妹。〈白銀の愚者〉と呼ばれる銀髪の少女。〈現世〉と〈幽世〉を自由に行き来する能力を持ち、空洞淵を〈幽世〉へと連れてきた犯人。〈幽世〉で起こる様々な異変の黒幕でもあるが、その行動原理は謎に包まれている。八雲紫+古明地こいし。
- 紅葉
- 深紅の髪をした〈大鵠庵〉のメイド。外出時は巨大な鉞を背中に背負っている。いつも無表情だが、穂澄とは仲が良い。十六夜咲夜。
- 薊
- 〈大鵠庵〉の執事。もともとは狼の根源怪異だったが、綺淡と金糸雀にとっちめられて金糸雀の従者となった。主が敬慕する空洞淵に対して何かと当たりが強い。八雲藍。
- 釈迦堂悟
- 黒衣に濃紫の袈裟を着た仏僧。東洋系の怪異を担当する祓い屋だが、阿漕な商売をしている破戒僧。
- 朱雀院
- 黒いキャソックにテンガロンハットを被り、くわえ煙草の胡散臭い男。西洋系の怪異を担当している祓魔師で、空洞淵のことを「空洞の字」と呼ぶ。
- 槐
- 山に閉じこめられていた童女の姿をした鬼。綺翠と空洞淵によって山から解放された後は御巫神社の隅に居着いている。大酒飲み。伊吹萃香。
- アヴィケンナ・カリオストロ
- 街外れの森に住む錬金術師。アッシュブロンドの髪をポニーテールにした年齢不詳の女性。空洞淵と同じく〈現世人〉で、10年ほど前に〈幽世〉に迷い込んだ。やたらハイテンションな早口で喋るカフェイン中毒患者。霧雨魔理沙+パチュリー・ノーレッジ?
- 御巫綺淡
- 300年ほど前に、金糸雀とともに〈幽世〉の切り離しに関わった御巫神社の初代巫女。綺翠の先祖にあたる。
用語
- 幽世
- 現世における妖怪や物の怪、また異能を持つ人間を隔離・保護するために、300年ほど前に〈国生みの賢者〉と御巫神社の初代巫女が現世から切り離して作った、人と人ならざるものが共存する異世界。現世から位相をわずかにずらした場所にあり、通常は現世からは空間的に隔てられているが、何かの拍子に人や物質が迷い込むことがある。幻想郷。
- 極楽街
- 幽世の中心をなす街。街の外にも「隠れ里」と呼ばれる人間の集落がいくつかある。人間の里。
- 根源怪異
- 現世にて、元から怪異として自然発生した怪異の総称。金糸雀や月詠はこれにあてはまる。現世から幽世が切り離された際、現世の根源怪異は全て幽世につれてこられたという。幽世で新たに根源怪異が発生することはない。
- 感染怪異
- 幽世にて、人々の認知によって発生した怪異。「怪異ではないか」という疑いを抱かれた人が、そうした人々の認知がある閾値を超えた段階で、本当に怪異化してしまう現象。そうなった人間は〈鬼人〉と呼ばれる。綺翠たち祓い屋は〈鬼人〉の怪異を祓い、人に戻す能力を持つ。
既刊リスト
- 幽世の薬剤師(2022年3月、新潮文庫nex)
- 幽世の薬剤師2(2022年10月、新潮文庫nex)
- 幽世の薬剤師3(2023年1月、新潮文庫nex)
- 幽世の薬剤師4(2023年6月、新潮文庫nex)
- 幽世の薬剤師5(2023年10月、新潮文庫nex)
- 幽世の薬剤師6(2024年2月、新潮文庫nex)
関連リンク
関連項目
親記事
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兄弟記事
- なし
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