アレイスター=クロウリー『魔術-理論と実践』(※新約22巻で引用あり)
科学サイドとは「とある魔術の禁書目録」とそのスピンオフ作品群における公式の勢力である。
概要
とあるシリーズの世界には科学技術を日々研究する「科学サイド」、この世界とは異なる世界の法則を操る「魔術サイド」が明確に存在する。
本シリーズにおける世界の科学技術は全て「学園都市」の影響下にあり、対等な組織は存在しない為、学園都市が科学サイドを支配する総本山として君臨している。
学園都市の科学技術は外部と比べて数十年は進んでおり、更に脳を開発して「超能力」を使う事が出来る様にする科学技術を独占している。
他にも高度な科学技術を使った兵器を保有しており、軍事力も他国を遥かに凌ぐ。
……というのが表面上の話。実態は根本から異なった。
その実態は、魔術師のアレイスター=クロウリーが創始した〈テレマ神秘主義〉という宗教。つまり、現実的には近代魔術に分類される概念の延長。科学サイド総本山の「学園都市」も、科学に擬態させたテレマ僧院であった。
「テレマ」とは
テレマってなんぞや?と思った人も多いと思う。此処でさわり程度に解説しておきたい。
テレマとは、20世紀最高の魔術師と呼ばれたアレイスター・クロウリーが始めた神秘主義、新興宗教。1904年に高次元存在〈エイワス〉から授かった知識で「自動書記」された〈法の書〉───リベル・エル・ヴェル・レギス、220の書、ALの書など様々な呼称がある───という書を聖典としている。
テレマの中心概念『汝の欲する所を為せ、それが汝の法とならん』という言葉は、禁書読者なら確実に聞いたことはあるだろう。テレマの思想では人の内在に神を見出し、個々人が全てと調和する(Magickを行う)ことでいずれは神と化すという。彼は東方聖堂騎士団の文書で「人では無い、そこに神がある」と言っている。
クロウリーは1904年より始まった人間が神と化す新しい時代「ホルスの時代(アイオーン)」の預言者を自称していた。
学園都市=テレマの僧院
第2のテレマ僧院「学園都市」、その到達点は「神ならぬ身にて天上の意思にたどり着くもの」。
テレマ思想の根本的な目的は〈Magick〉によって聖守護天使(高次の自己)との対話を果たす、マクロとミクロの結合、すべての調和を果たすこと。
つまり、テレマは「とあるシリーズのバックボーン」なのである。
なんせ今作でも上記と同じ概念が登場し、クロウリーが世界を「魔術と科学」に切り分け、その科学こそがifのテレマの姿だというのだから。
ちなみに現実の日本では、アレイスター・クロウリー自体が創作品で名前が使われる割に活動内容が知られておらず、テレマも無名同然。
日本でテレマ普及に尽力している魔術結社「東方聖堂騎士団(O.T.O.)」の日本支部は、日本でテレマが広まらない事については「言語間の壁」(表現の問題)と結論づけている。
Magick
先述したが新約22巻で以下の発言が引用されている。
魔術とは《意志》に従って変化する《科学》にして《業》である
(Magick is the Science and Art of causing Change to occur in conformity with Will)
テレマ系における魔術とは、《意志》に依って変化する《科学》であり《業(※技芸)》。この意志はテレマ教における真の意志のことで、クロウリーにとって「真の意志を見出し、それに応じた行為をするための方法論」こそがmagickだった。
※magickはヨガや占星術・タロット、各儀式の他、性魔術なども含まれる。「男と女」はテレマにおいて重要な要素である。
クロウリーは自身の定義するセレマの魔術にMagickというスペルを適用しており、「全ての人為的かつ意図的な(意志下の)行為こそが魔術(Magick)に分類される」と述べている。
「k」は11番目のアルファベットでそれは同時にクリフォトの数だが、ケネス・グラントはこの「k」にもっと深い意味を与えている。ダイアン=フォーチュンは11がクリフォトの数のため、初級者にとって危険と言っていたが、これは合一の数(5と6の結合)でもある。
ちなみにMagickについては、かなり早い段階(第7巻)で言及済みである。
アレイスター=クロウリーと〈テレマ〉
※他の禁書記事でも説明されたが、科学サイドの創立までの歴史を纏めてみたい。
科学サイドを設定したのは、
近代魔術結社〈黄金夜明〉から独立したアレイスター=クロウリーという名の西洋魔術師だった。
※1 アンナ=シュプレンゲル曰く、「形を変えたテレマ」の科学サイド以外に、現代科学の源流がヘルメス系の薔薇十字団にあるという。その根拠の一つはフランシス=ベーコンが「4つのイドラ」を提唱した為とされる。史実ではベーコンは薔薇十字会、もしくは薔薇十字団本部の人間だったという説がある。
カバラ神秘主義をはじめ、ヘルメス学や薔薇十字───禁書目録も記憶してる“ヘルメス文書”や“Mの書”とか──など、あらゆる体系が統合された〈黄金夜明〉の近代西洋魔術は、世界に意図しない運命──火花や飛沫ともいう───を撒き散らす。
生と死、幸運と不幸、出会いと別れ、この世界中の出来事・運命は火花の影響を受けている。
同僚の魔術師アラン=ベネットに火花・飛沫の影響を聞いたクロウリーは、運命と世界の根幹構造を変えるために行動を始めた(その一つが、1904年に「聖守護天使エイワスの召喚」として実を結ぶ)。
しかし運命の飛沫はクロウリーの最初の娘「ニュイ=マ=アサヌール=ヘカテ=サッポー=イザベル=リリス」にも及んだ。クロウリーの必死の努力も虚しく、彼の最愛の娘リリスは魔術が生み出した運命によって死に至ってしまう。
当時、クロウリーは既にエイワスの召喚によって新たな時代の法則を提唱しており、魔術自体に本格的に見切りをつけ、テレマ──後に彼により科学に偽装される──を世界に広めることになる。
※2 史実通りであればリリスの死は1906年の出来事だが、本作でクロウリーが動き出したのは1900年、ブライスロードの戦いが勃発する前である。ベネットに娘の運命や火花・飛沫の存在を教示され、その原因を作り出す〈黄金夜明〉を敵に回し、破滅・分裂・衰退に導いている。
テレマ神秘主義 -〈法の書〉の執筆
時はリリスの死から少し遡る。
1904年、クロウリーは当時娘を身籠っていた妻ローズ=ケリーとの旅行中──と言っても史実通りであれば旅行中断中の出来事だが──聖守護天使エイワスと呼ばれる謎の高次元存在を物の弾みで妻の体に降ろし、その存在から伝え聞いた内容を〈法の書〉として記している。
しかし、一説にはクロウリー本人すら当時何を書いたのか完全に把握出来ていないらしく───この神がかり状態を現実世界では「自動書記」という───、後世の近代魔術師や魔術研究家にも正しく読み解けたものはいない。
クロウリーはエイワスが召喚された1904年以降を人類が真なる目覚めを果たす「ホルスの時代」、それまでの神に隷属する旧い時代を「オシリスの時代」と称していた。
新時代で使われるクロウリーの魔術体系「Magick」は科学であり、業=技芸と表現されている。
1920年~1923年までシチリア島で〈テレマの僧院〉──学園都市の前身となる宗教施設──で色んな事をやっていた。しかしとあるハプニングにより僧院は閉鎖し、イタリアを国外追放された。
※3 この辺の事情を説明するにはクロウリーの愛人、緋色の女であるリア・ハーシグの存在が必要不可欠だが、今のところ存在に触れられていない。あと追放したのはムッソリーニである。
1947年、クロウリー死亡(という事に偽装した。年齢はどうなってたんだろう)。
第二次世界大戦終了後のどさくさに紛れ、学問復興というお題目を掲げて第2のテレマ僧院「学園都市」を日本に創設。原型制御という人間の根本的な価値観を生み出したりする技術(科学なのか…?)を使い、世界を科学と魔術に切り分けた。
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関連項目
- とある魔術の禁書目録
- 魔術サイド
- エイワス(とある魔術の禁書目録)
- アレイスター=クロウリー(とある魔術の禁書目録)
- 学園都市(とある魔術の禁書目録)
- 超能力(とある魔術の禁書目録)
- 黄金(とある魔術の禁書目録)
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