概要
2008年9月に角川文庫より刊行された、「著者初のノンSF」にして、「心はSFのSF小説」。
著者・山本弘がSF作家として初期の頃から考えていた「SFガジェットを一切使わずにSF小説を書くことは可能か?」という課題に挑戦した一作であり、「ロボットや宇宙船などSFに登場する小道具が出てきても話はSFではない」作品が世の中には多数存在するため、逆に「現代の日本で、現実に不可能なことをやって生きている人物を題材にしたストーリーを」と考えた結果、詩羽という存在ができあがったという。
普通出会わないような人間同士に化学反応を起こすことで双方に幸福をもたらす彼女の生き方・考え方は、作中の登場人物のみならず、読んでいる読者にも新しい人生観やちょっと幸せな後味・読後感を残していくのではないか。
あとがきの参考文献にもあるとおり、作中には様々なSF小説及びアニメ・漫画作品をモチーフにしたわかる人にしかわからないパロディネタが散りばめられているほか、本作とは別に著者が考えていた作品のアイデアが「作中の世界で広まっているアニメ・漫画」としていくつか登場している。
ストーリー
あの日まで、僕はこの世に奇跡が存在するなんて信じていなかった。
「人に親切にするのが仕事」と自称する、年齢不詳・住所不定の謎の女性・詩羽。
姓は何なのか、「詩羽」とは本名なのか、これまでどんな人生を歩んできたのか誰も知らない。しかし、今まで彼女に出会った街の人々は人同士のつながりを得て幸せな人生を送っているという。
そして彼女の住んでいる東京近郊の小都市・賀来野市で展開される、詩羽が起こす奇跡を、異なる人物たちの視点から4つの章として描く。
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最後に
言うまでもなく、これはフィクションです。
詩羽なんて人間は実在しませんし、彼女のような生き方は現実には不可能です。
でも――この本を読み終わった後、ちょっとご自分の周囲を見回してみてください。
あなたは本当に「幸せになる生き方」をしていますか?
雨に濡れることを避けていませんか?
色褪せたメニューを店の前に出していませんか?
遠い昔のタバコの火にこだわっていませんか?
BGMを変えるスイッチがあるのに、それに気がついていないだけじゃないですか?
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