魔法つかいプリキュア! 奇跡の変身!キュアモフルン!とは、アニメ『魔法つかいプリキュア!』の劇場アニメーション作品である。
2016年10月29日公開。映画プリキュアの第21作である(レギュラーシリーズ映画では第13作)。
概要
今回は「願いの石」の復活を祝う、100年に一度の大魔法フェスティバルで起こった出来事を描くことになるが、今回のメインはタイトルにもあるようにモフルン。謎のクマ・ダークマターにさらわれたり、クマだらけの不思議な森に迷い込んだり、そしてまさかのプリキュアに変身したり(!)と、様々な活躍を見せることになるかも。ということで恒例のミラクルライトもモフルンのミニフィギュアが発光部になった「ミラクルモフルンライト」になった。また、『みんなで歌う♪奇跡の魔法!』の時点からみらい・リコ・モフルンの私服デザインコンテストを実施、グランプリ作品が実際に劇中で使われている。
スタッフは監督が田中裕太、脚本が田中仁、プロデューサーが神木優と、『Go!プリンセスプリキュア』で手腕を振るった3人が参加。田中裕太は本作が初の映画監督作品となる。キャラクターデザイン・作画監督は『ドキドキ!プリキュア マナ結婚!!?未来につなぐ希望のドレス』以来となる上野ケンが手がける。またゲスト声優として今回の敵・ダークマター役に浪川大輔の起用もアナウンスされている。
前年に引き続いてフルCGの短編作品として『キュアミラクルとモフルンの魔法レッスン!』が同時上映。前年も製作に携わった真庭秀明が監督を、日向学が演出を担当する。
さらに短編のテーマソング(長編の挿入歌としても使用)「正しい魔法の使い方」をAKB48の渡辺麻友が担当。現役メンバーとしては初、AKB出身者を含めれば『ハピネスチャージプリキュア!』での仲谷明香以来の起用となる。大のアニメファン・プリキュアファンでもある渡辺が歌う、秋元康作詞のプリキュアの世界観を取り込んだ歌が映画を盛り上げることになる。
ちなみに映画公開時に映画サイズ版のみ配信またはサントラに収録されていたが、2017年12月発売の渡辺の1stソロアルバムにこの曲も収録されることが発表、これが初のフルサイズ音源になる(後に2018年10月発売の映画主題歌コレクション3にも収録)。
また、今回はモフルンがメインと言う事で、モフルンを応援してもらうべく全国各地のクマキャラクターにオファーをかけたところ、お馴染み熊本県のくまモンを筆頭に北から南まで官民合わせて10体のキャラが「クマ応援団」として登場、劇中でも大魔法フェスティバルに参加したり、ミラクルライトを振って応援している。
で、この映画から前売券に玩具連動特典が付くようになり、今回は映画で登場するリンクルストーンのいずれかが付いている。この特典が効果を奏したか、テーマソングにまゆゆ起用あるいはモフルンのプリキュア化が話題になったか、何と発売初日2日間で前年比423.1%という驚異的な前売券の売り上げを記録した。これは秋映画では歴代1位、春映画を含めても歴代3位という実績となる。興行成績も最終的に6億7000万円と回復傾向が見られたほか、11月1日時点でシリーズ累計観客動員が1500万人を突破している。
この項目は、映画のネタバレ成分を含んでるモフ。 スクロールする覚悟が出来ているなら思い切って読み進めて欲しいモフ~ キュアモフルンについてはモフルンの記事にあるから、そっちも参照して欲しいモフ。 |
今回の物語はモフルンを軸に、モフルンとみらいの絆、モフルンと出会ったダークマター(クマタ)との関係性を描いている。
テレビシリーズ本編中でも語られているが、みらいとモフルンはみらいが生まれたときからの「きょうだい」とも言うべき長い付き合いで、みらいはモフルンを大事に思っているし、モフルンも動けないときからみらいをずっと見つめ続け、見守ってきている。長年の「絆」あってこその関係で、これまでの作品としては、『フレッシュプリキュア! おもちゃの国は秘密がいっぱい!?』におけるラブとウサピョン、『ハピネスチャージプリキュア! 人形の国のバレリーナ』のつむぎとジークや人形達、『ドキドキ!プリキュア マナ結婚!!?未来につなぐ希望のドレス』でのマナとマロと同様、あるいはそれ以上の関係性だと言える。
その一方で、みらいにとっては願い事をしようにも、何を叶えてもらおうか、何が自分の願い事なのかピンとこない。モフルンはモフルンで自分よりもみらいたちの願いを叶えて欲しいという。将来の夢があまり描けないみらい、というのはこれまでもちょっとずつは出ているものが、今回「願い」としてクローズアップされ、それがモフルンの願いのなさやみらいを大切にしていることも加わることでより強調された感じだろう。
そうした中でダークマターによって離ればなれにさせられたことで、みらいもモフルンも現状の願いというのを悟ることになる。長い間一緒だった2人の関係、それを続けたいという事。ずっと一緒にいたいという、あまりにも根本的で純粋な願い事だろう。みらいとモフルンの心理描写を表した挿入歌「ふたつのねがい」にもそのことがよく表れている。
もちろん短い期間とはいえ、相棒としてみらいを支えてきているリコも、娘として育てられてきたことはも、2人のことをちゃんと理解していた。まほプリの4人はよく「家族」に例えられるが、そうした4人の絆というのが明らかに見える物だと言えよう。その絆や人との繋がりこそがみらいを動かす原動力ともなっているし、テレビも含めた作品自体のコンセプトである「手を繋ぐことによる友情と奇跡」をも表している。だからこそ、モフルンが元のぬいぐるみになったときも、みらいは聞こえないはずのモフルンの「声」を聞き、それ故に前向きに動き出せたとも言える。
一方、ダークマターは遙かな昔からその大きな姿であったとは言え、本心は優しく、なぜか使える魔法によって人々のために役立とうと思っていた。ところが人々も、動物でさえも、その姿から恐れられ、遠ざけられてしまっていた。自分が望んでもいないのに孤独を強いられ、いつしかそれが魔法つかいや魔法界全体に対する憎悪へと変わっていった。逆に言えば、ダークマターをその姿や魔法を使えるということだけで、奇異に感じて遠ざけてしまった人々や動物がいた事で、彼が言われも無い状態におかれたしまったという無情さも孕んでいる。だからこそモフルンを利用し願いの石の力を使ってでも魔法つかいを滅ぼそうと思ったのである。
しかしながら、クマタの姿でモフルンと接したとき、モフルンは怯えるどころか積極的に仲良くなろうとする。モフルンが純粋無垢であり、みらいと過ごしてきた中で友情の大切さを知っているからこそ、クマタであろうと優しく接することができた。
故に、ダークマターの拳がキュアモフルンのリンクルストーンを砕き、モフルンが元のぬいぐるみとなり、みらいが打ちひしがれる様を見て、事の重大性だけでなく、「友達が欲しかった」という自らの本当の願いを知ることとなり、「初めて優しく接してくれ、友達になろうとしてくれた」モフルンの動かなくなった姿を見て嘆き悲しむことになる。モフルンが初めて手を繋いでくれたことで、ようやくダークマターも人の繋がりの大切さをやっと感じることが出来たのだろう。また、モフルンが最初にクマタにあった際にいた子グマの女の子が他のクマと異なり彼を警戒しなかったこと、そして最後にクマタの手を取ってあげたことも注目しておきたい。この子もまた無垢故に仲良くなろうとしてくれたのだ。
このような人間性の高いドラマを、両田中氏は奇麗に描ききっていた。特に田中監督の演出は、神木Pが「ちょっとしたすれ違いやちぐはぐ感を嫌味なく描いてもらえるのではないか」と語っているように、嫌な気分をせず感動的に、そして見終わった後にほっこりする形でまとめている。さらに上手く本編の内容も組み入れており、この点ではテレビシリーズのスタッフとうまく連携し、物語の内容をすくい上げることができている好例ではないだろうか。
さらに言えば、ダークマター・クマタの二面性を浪川が見事に演じ上げたのも素晴らしい点でもある。もっとも、見ていた子供たちの中にはその描写や演技故に怖がって泣いてしまった、ということも起きていたりもするが。
その一方でタナカリオン節とも言うべき、小気味いいコミカルなシーンや迫力あるアクションシーンも展開されている。
コミカルな面ではモフルンの一挙手一投足はもちろん、作品の世界観を上手く酌んだ秋元康の詞による渡辺麻友の「正しい魔法の使い方」を森のクマたちと可愛らしく踊るなど、モフルンの可愛らしさが出ているし、ことはが必死に願い事をしたり、キュアッププリン(グリコのプッチンプリンとのタイアップだったりする)で特大プリンアラモードを出したり、サーカスのフレアドラゴンと一緒に魔法で芸を見せたり(というか魔法界のドラゴンははーちゃんに一目惚れしやすいんですかね)と、彼女の天真爛漫さが見える。もちろんみらリコのいつも通りの夫婦漫才的な会話もあったり、ヤナオニの実の種をかじったことでとんでもない目に遭うというギャグポイントも見られる。こうしたコミカルな要素が後々の展開の伏線にもなっている事も注目したい。
アクションも五條真由美が歌う「鮮烈!キュアモフルン」をバックに小柄なキュアモフルンがダークマター相手に躍動感あるアクションを見せ、さらにクライマックスではプリキュア4人の歌う「キラメク誓い」に織り交ぜられたメインテーマと4つの変身BGMにのせて、カラフルスタイルをフル展開させた末にまさかの分身全スタイル展開でいわば1作品でのオールスターズ的な戦いを見せてからハートフルスタイルに繋ぐという、まさにギミックをふんだんに盛り込む、田中裕太演出の真骨頂を見せてくれている。
もちろん、魔法界の面々についても本編のこれまでの内容を上手く組み入れている。何より校長はフェスティバルの進行からダークマターの襲撃に遭った際の避難指示、ミラクルライトを使う指示やプリキュアたちの戦いを魔法を通して中継するに至るまで、影のMVPとも言うべき活躍を見せている。
総じて見れば、全体的に丁度いいバランスで構成され適度なテンポなよさも相まって、傑作という声を挙げる人が多いように思えるし、子供たちだけでなく大人の観客でも涙した者が多く見受けられる。
強いて残念な点を挙げるのならば、「エンディング映像が小さくかつ通常バージョンのままで、せめてCGのキュアモフルンも出して欲しかった」「ミラクルライトを使ったり振ったりするポイントをもう少しわかりやすくすべきかも」「魔法界で物語を中心に進めるとは言え、ナシマホウ界の扱いがオープニングのみでちょっとさみしい」という所だろうか。
もっとも最後のは、本編では勝木かな役の菊地美香が前述の子グマ役で出演しているのをはじめ、クラスメイト役の多田このみ、髙橋孝治、朝井彩加や先生役の藤沼建人もちょい役で出ていたりするので、ちょっとした支えになったり探す楽しみがあるかもしれない。ついでに言えばドラゴン役はドンヨクバール役の山本祥太が兼役で担当していたりする。
また、前年同様ミラクルライトのチュートリアルとなった短編も、ミラクルの髪の毛の細かい描写やモフルンが本物のぬいぐるみと思えるようなCGの作り、高難易度とされる草木や青空などの自然描写など、高度なCG描写を巧みに行っており、この点でも東映アニメーションのCG技術力が一層レベルアップしているのがよく分かる。内容も可愛らしく描かれているだけでなく、前年よりもミラクルライトを使うポイントがわかりやすくなったほか、ミラクルがキュアフローラに、モフルンが『長ぐつをはいたネコ』のペロに変えられるという小ネタも挟み込むなど、表現面でもかなり向上しているのではないだろうか。
スタッフ
- 奇跡の変身!キュアモフルン!
- キュアミラクルとモフルンの魔法レッスン!
キャスト(ゲストキャラクターのみ)
主題歌
- オープニングテーマ「Dokkin♢魔法つかいプリキュア! Part2」
- エンディングテーマ「魔法アラ・ドーモ!」
- 短編テーマソング/長編挿入歌「正しい魔法の使い方」
- 挿入歌「キラメク誓い」
- 挿入歌「ふたつのねがい」
- 挿入歌「鮮烈!キュアモフルン」
関連項目
親記事
子記事
兄弟記事
- Dokkin♢魔法つかいプリキュア!
- CURE UP↑RA♡PA☆PA!~ほほえみになる魔法~
- 朝日奈みらい
- 十六夜リコ
- モフルン
- 花海ことは
- みらリコ
- 魔法アラ・ドーモ!
- 校長 (魔法つかいプリキュア!)
▶もっと見る
- 1
- 0pt