エフティマイア(F T Maia)とは、2005年生まれの日本の競走馬。鹿毛の牝馬。
超大荒れとなった2008年牝馬三冠の最大の立役者というべき、大荒れ配当の星の下に生まれた馬。
概要
父フジキセキ、母カツラドライバー、母父ニホンピロウイナーという血統。
父は*サンデーサイレンス初年度産駒の「幻の三冠馬」。種牡馬としても短距離~マイルを中心に多数の活躍馬を輩出した。
母は4戦未勝利だったが仔出しが非常によく、なんと17頭もの仔を産んでいる。エフティマイアは第3仔。
母父は80年代に短距離路線の価値を見直させた「マイルの皇帝」。種牡馬としてもヤマニンゼファーやフラワーパークを送り出した。
2005年2月14日、ノーザンファームで誕生。同年のセレクトセールにて800万円(税抜)で落札された。記録を見る限り、同セールで下から5番目タイに安い落札価格だったようだ。
オーナーは「エフティ」冠名を用いた吉野文雄で、京王杯2歳Sからは娘の吉野英子が引き継いだ。「エフティ」の意味は「家族のイニシャル」とのこと。「マイア」は母母ノーザンマイアから。
吉野オーナーは蛯名正義騎手の初GⅠ騎乗馬リアルビクトリ(1989年皐月賞17着)の馬主であり、その縁で蛯名騎手はエフティ冠の馬の多くで主戦を務めた。もちろん彼女の主戦も蛯名正義であった。
大荒れの女神
デビュー~クイーンカップまで
ギャロップダイナやダイナアクトレスで知られる美浦・矢野進厩舎に入厩したエフティマイアは、2007年6月24日、福島・芝1200mの新馬戦で蛯名正義を鞍上に、5馬身差の圧勝デビューを飾ると、2戦目の新潟・芝1400mのマリーゴールド賞(OP)も1番人気に応えて快勝。
続けて新潟2歳ステークス(JpnⅢ)へ参戦。先行集団の中の好位で進めたエフティマイアは直線入口で進出すると早くも先頭に立ち、新潟の長い直線をそのまま押し切って勝利。吉野オーナーに最初で最後の中央重賞勝利を贈った。
ちなみにこの新潟2歳Sでは2着に単勝89.8倍の16番人気シャランジュが突っ込み、三連単は142万3010円の大荒れであったが、こんなものは彼女の生まれた星の下では単なるプロローグに過ぎなかった……。
この後、吉野文雄オーナーが亡くなり、娘の吉野英子オーナーに名義が変わったエフティマイアは、京王杯2歳ステークス(JpnⅡ)から阪神ジュベナイルフィリーズ(JpnⅠ)へと向かったが、2番人気に支持された京王杯2歳Sは稍重の馬場に脚をとられたのか好スタートを切ったのにずるずる下がってそのまま後方で13着撃沈。阪神JFは好位で先行したが直線で沈んでブービー17着。
阪神JFから中1週で向かったフェアリーステークス(JpnⅢ)は後方から脚を伸ばしたものの5着まで。明けて3歳となっても、菜の花賞(OP)もクイーンカップ(JpnⅢ)もあまり見せ場なくともに6着。
このあと、矢野師の定年に伴い、新規開業した鹿戸雄一厩舎に転厩となったエフティマイアは、新潟2歳Sの勝利で賞金は足りていたのでそのまま牝馬クラシックへ向かうこととなった。
しかしここまでの戦績、どう見ても単なる早熟2歳重賞馬である。2歳の夏でピークが終わってしまった馬であり、牝馬三冠に出て勝ち負けになるわけないやん……とみんな思っていたのだ、このときは。
2008年牝馬三冠:700万・44万・1098万馬券の最優秀助演賞
迎えた桜花賞(JpnⅠ)。鹿戸厩舎はもちろんこれがGⅠ初出走である。良血馬ポルトフィーノが出走取消となり、2歳女王トールポピーやクイーンC勝ち馬リトルアマポーラが人気を集める中、エフティマイアと蛯名正義のコンビはというと……単勝94.3倍、17頭中15番人気であった。ここまでの戦績に加え、大外8枠18番、当日の馬体重は-10kgで420kgとくれば、まあ当然の評価である。彼女より人気薄だったのは函館2歳S勝利後4戦続けて2桁着順のハートオブクィーンと、地方から移籍初戦のマダムルコントで、103.2倍と105.5倍なのでまあ似たり寄ったり。どう考えても勝ち負けはないと見られていた。
ところがどっこい、ハイペース縦長の展開となって7頭の前方集団と10頭の後方集団に分かれたレースを前方集団の後ろで進めたエフティマイアは、直線で外に持ち出すと鋭く脚を伸ばす。残り100mでも横並びの大混戦となったが、その中から残り50mを切ってグイッと抜け出したエフティマイア。15番人気の超大穴で桜花賞制覇だ! ――と思った瞬間、外から12番人気のレジネッタにかわされて半馬身差の2着。
蛯名騎手は「勝ったと思ったけどねぇ…」と悔しそうに語ったが、12番人気-15番人気-5番人気の決着となり、三連単はなんとびっくり700万2920円。昨年のNHKマイルカップでピンクカメオとムラマサノヨートーが叩き出した973万馬券に次ぐ、JRA重賞歴代2位(2024年現在も4位)の超大荒れ配当をもたらすことになった。ちなみに上述の16番人気ハートオブクィーンも5着に来ていたりする。
続いてエフティマイアは優駿牝馬(JpnⅠ)へ参戦。桜花賞2着馬になった彼女の評価はというと……単勝32.5倍の13番人気。どう見ても前走フロック視です、本当にありがとうございました。だいいちフジキセキ産駒だし母父ニホンピロウイナーだし、2400mは距離が長いと見られたのも致し方なしであろう。
ところがどっこい。中団前目で2番人気レッドアゲートを見るように進めたエフティマイアは、4コーナーで外に出していき、直線でスムーズに進路を確保すると蛯名正義の追い出しに応えて脚を伸ばし、残り200mで先頭に抜け出す。これはもうフロックでもなんでもない、オークス制覇だ! ――と思った瞬間、最内から抜け出して来たトールポピーにかわされ、差し返さんと食い下がったもののアタマ差届かず、また2着。
トールポピーが馬群を抜け出す際に大斜行しており、レース後長い審議となったが、降着はなく池添謙一に2日間の騎乗停止という裁決となり、再び掴みかけたクラシックタイトルはするりと逃げていった。
なお3着はそのトールポピーの斜行で不利を受けた桜花賞馬レジネッタで、2歳女王-桜花賞2着馬-桜花賞馬で決着したにもかかわらず4番人気-13番人気-5番人気で三連単44万360円である。そんなことある?
さて、夏のクイーンステークス(JpnⅢ)を5着としたあと、エフティマイアは秋華賞(JpnⅠ)に乗りこんだ。1番人気はオークス馬トールポピー3.6倍、2番人気は桜花賞馬レジネッタ4.0倍。そしてエフティマイアは……3番人気! 10.0倍! ついに実力者としての評価を獲得したエフティマイア。主戦の蛯名正義は騎乗停止で吉田隼人のテン乗りとなってしまいはしたが、あとは結果を示すだけ。春の二冠の悔しさを晴らすべく最後の一冠に挑んだ。
レースは良血馬ポルトフィーノをおしのけて出走してきた16番人気のダート馬プロヴィナージュが逃げる展開を、前目の4~5番手という絶好のポジションで追走。直線で脚を伸ばし、逃げるプロヴィナージュを捕まえにかかり――。
……結果は5着。レジネッタが8着、トールポピーが10着に沈む中で掲示板確保で意地は見せた……と言えるかもしれないが、馬券外は馬券外である。
勝ったのは11番人気ブラックエンブレム。2着は8番人気ムードインディゴ。そして3着には逃げた16番人気プロヴィナージュが粘り込み、三連単は衝撃の1098万2020円。JRA重賞歴代1位(その後2015年ヴィクトリアマイルに更新され現在は2位)の配当となった。
桜花賞とオークスでは自身が人気薄で突っ込んで配当を跳ね上げ、秋華賞では自身が人気を背負って馬券外に飛んでさらなる高配当を演出した。この超大荒れ牝馬三冠において、決して主役にはなれなかったが、3戦全て大荒れ配当の一助となったエフティマイアには、最優秀助演賞を差し上げたいところである。
その後
秋華賞後、続けてエリザベス女王杯(JpnⅠ)に参戦したエフティマイアだったが、ポルトフィーノのカラ馬1位入線の衝撃の陰でひっそりと6番人気13着という地味な結果に終わる。
長めの休養を経て翌2009年8月の朱鷺ステークス(OP)で復帰し3着に好走したが、その後の彼女の戦績自体に語ることはない。5戦全て2桁着順の惨敗に終わり、2010年の関屋記念(GⅢ)14着を最後に現役を引退した。通算19戦3勝 [3-2-1-13]。
ただし彼女の戦績とは別の所に語るべきことがある。彼女が走った2009年の4戦の配当だ。
前述の朱鷺Sは単勝138.1倍の14番人気マイケルバローズが勝ち三連単166万7100円。
京成杯AH(GⅢ)は2着に14番人気アップドラフトが突っ込んで三連単67万7660円。
府中牝馬S(GⅢ)は7番人気-3番人気-11番人気で決着して三連単42万1050円。
アルゼンチン共和国杯(GⅡ)に至っては11番人気-4番人気-10番人気で三連単92万2600円である。
5番人気3着だった朱鷺S以外の3戦ではエフティマイア自身は人気の面でも着順の面でもこの高配当とは無関係なところにいたわけだが、重賞初制覇の新潟2歳Sからもう、なんというかそういう星の下に生まれた馬としか思えない。
生涯19戦のうち三連単の発売があった17戦で、三連単の合計配当は2441万7300円。1戦平均143万6312円の配当である。これがどの程度の記録かはさすがに調べてないのでわからないが、エフティマイアが大荒れ配当に愛された馬であったことは間違いないだろう。
引退後は故郷のノーザンファームで繁殖入り。2021年からはハクレイファームの所有となっており、2024年現在も繁殖牝馬として現役のようである。直仔に今のところ目立った活躍馬はないが、6頭の牝馬を産んでおり、うち4頭はすでに繁殖入りして血を繋いでいる。
血統表
フジキセキ 1992 青鹿毛 |
*サンデーサイレンス 1986 青鹿毛 |
Halo | Hail to Reason |
Cosmah | |||
Wishing Well | Understanding | ||
Mountain Flower | |||
*ミルレーサー 1983 鹿毛 |
Le Fabuleux | Wild Risk | |
Anguar | |||
Marston's Mill | In Reality | ||
Millcent | |||
カツラドライバー 1998 鹿毛 FNo.4-k |
ニホンピロウイナー 1980 黒鹿毛 |
*スティールハート | Habitat |
A. 1. | |||
ニホンピロエバート | *チャイナロック | ||
ライトフレーム | |||
ノーザンマイア 1990 鹿毛 |
*ノーザンテースト | Northern Dancer | |
Lady Victoria | |||
*マイア | Cipol | ||
Leandra |
関連動画
さすがに勝った新潟2歳Sの動画はないので(YouTubeにはある)大荒れ牝馬三冠をどうぞ。
関連リンク
関連項目
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