クィーンスプマンテ(英:Queen Spumante、香:美酒皇后)とは、2004年生まれの競走馬。2009年エリザベス女王杯に勝った名牝である。馬名は同名のカクテルから。
概要
父ジャングルポケット、母センボンザクラ、母父サクラユタカオーという、競馬ファンが思わず和んでしまうような血統。うんうん。ユタカオーのスピードにジャンポケのスタミナを配合ね。でも気性難を強調しそうな血統だな。
馬主のグリーンファームという一口馬主クラブの勝負服は、緑地に黒三本輪。これはトキノミノルの馬主だった永田雅一氏の勝負服を譲り受けた、由緒ある服色である。
美浦・小島茂之厩舎に入り、同期の皆に大きく遅れて3歳3月にデビュー。11番人気ながら後の重賞馬ロックドゥカンブの3着に突っ込んだ後、2戦目で初勝利。夏に2勝目を挙げたが、その前後に出走したオープンクラスの競走ではスイートピーSでブービー17着、紫苑S10着、秋華賞12着と全く勝負にならず、自己条件に戻っても8着と敗れてシーズン終了。4歳になると安定し、6戦中5戦で掲示板内と好走を繰り返すようになるものの、挙げた勝ち星は降級初戦の500万下の一つだけであった。
5歳になると1000万下を勝ち4勝目を挙げたが、その後の1600万下では9・8着と連敗。もう5歳だし、クラブの規定でこの年限りで引退になるので、流石にこの辺でお終いという感じである。
しかし夏に格上挑戦のみなみ北海道ステークスで大逃げを打ち3馬身半差で圧勝。これがいわゆる前振りとなる。続く京都大賞典でも大逃げを打つがここは直線で捕まって9着に敗北。そのままクィーンスプマンテは最後の大一番となるエリザベス女王杯に向かった。
このレース、春の二冠馬ブエナビスタ、オークス・秋華賞を勝って無敗で挑んだ2年前に降着の憂き目を見たカワカミプリンセス、前年のこのレースを勝ったリトルアマポーラ、フランスからの遠征馬シャラナヤ、名前だけで大人気、前走京都大賞典でクィーンスプマンテと一緒に大逃げして逆噴射した2005年の2歳女王テイエムプリキュアなどの錚々たる面子が揃っていた。その中で「主な勝ち鞍:みなみ北海道S(OP)」のクィーンスプマンテはどう贔屓目に見ても見劣りする存在で、実際18頭中11番人気であった。
小島師は「逃げれば粘る馬だから、競り掛けられても譲らずに行け」と田中博康騎手に指示を出していた。戦前の予想でも確かに「クィーンスプマンテとテイエムプリキュアが逃げる形になるだろう」と誰もが予想はしていた。しかし、まさかあんなことになるとは、殆どの人は想像もしていなかった……。
スタートから普通に、ごく普通にハナを切ったクィーンスプマンテ。それにテイエムプリキュアが競り掛ける。まったく予想通り、というか京都大賞典とほぼ同じ展開。ブエナビスタは後方待機。うんうん。よしよし。誰もが納得な序盤であった。
暗雲が漂ってきたのは1~2コーナーを過ぎた辺りであった。並んで離しているクィーンスプマンテとテイエムプリキュアだったのだが、ガンガン行っているのかと思ったら手ごたえが楽々だったのである。離れた三番手のリトルアマポーラの手ごたえも楽々。ピクニックじみた競馬である。どの馬ものんびりと、あまりにものんびりと走っている。
そして1000m通過タイムが1分00秒5、思いっきり平均ペースである。この時点で前2頭と後続の差は10馬身以上。「え、えええ? 何で誰も行かないの? てか、もう間に合わないんじゃないの?」などと騒然とする観衆をよそに、まだ誰も動かない。差は縮まるどころか更に開いて20馬身は優に超える大差となっていた。
直線を向いたところではもう誰もが「うははははは! 何あれ! すげ~!」などとやけっぱちで大爆笑である。後続馬群を置き去りに、テイエムプリキュアを従えてクィーンスプマンテは直線でも脚を伸ばす。流石にゴール前では脚が止まったが、共に逃げたテイエムプリキュアも恐るべき末脚を見せて追い込んできたブエナビスタも抑えて、クィーンスプマンテはそのまま1着でゴール板を駆け抜けたのだった。
「これが競馬の恐ろしさ!」と馬場鉄志アナウンサーは叫び、ファンは「てめぇらみんな腹を切れ!」と(主に3番手でじっとしていたリトルアマポーラのクリストフ・スミヨン騎手などの)後方にいた騎手たちに憤るやら、もう笑うしかないやら騒然。いくら重賞未勝利馬と終わった筈の馬だからとは言え、平均ペースで逃げている逃げ馬2頭を20馬身も行かせてしまうとは……。
配当は単勝7710円(!)、馬連10万2030円(!!)、三連単154万5760円(!!!)という、史上に残る大波乱であった。
その後香港国際競走に遠征し、香港カップに出走したが10着と敗れて引退。社台ファームで繁殖入りし、2023年まで10頭の仔を残した。2024年以降も引き続き社台ファームで功労馬として繋養される見通しである。ちなみに、香港での登録馬名は「美酒皇后」。馬名由来(カクテル名)から付けられた名前だが、なんで「美酒女王」じゃなかったのだろうか?
エリザベス女王杯まで、この馬は格上挑戦で出走したOP特別を1つ逃げ切っただけの馬であった。そんな馬がGIで逃げていても確かに「その内潰れる」と思うだろう。それが潰れなかったのだからクィーンスプマンテにも相当な実力があったのだろう。クラブの規定で引退してしまったが、もうちょっと走ってもらって実力を見極めたかった。そんな馬であった。
2009年のエリ女を「史上最低の糞レース」という人も多いが、クィーンスプマンテと田中騎手が勝ち取った栄光自体は何ら貶められるようなものではない。子孫が大きいところで逃げ切り勝ちを収めることを期待したいものである。
それにしても2009年エリ女と言うと、なぜかテイエムプリキュアばかりが語られるのはどうしたことだろうか。
血統表
ジャングルポケット 1998 鹿毛 |
*トニービン Tony Bin 1983 鹿毛 |
*カンパラ Kampala |
Kalamoun |
State Pension | |||
Severn Bridge | Hornbeam | ||
Priddy Fair | |||
*ダンスチャーマー Dance Charmer 1990 黒鹿毛 |
Nureyev | Northern Dancer | |
Special | |||
Skillful Joy | Nodouble | ||
Skillful Miss | |||
センボンザクラ 1992 栗毛 FNo.4-r |
サクラユタカオー 1982 栗毛 |
*テスコボーイ Tesco Boy |
Princely Gift |
Suncourt | |||
アンジェリカ | *ネヴァービート Never Beat |
||
スターハイネス | |||
ダイナフランダース 1979 鹿毛 |
*ノーザンテースト Northern Taste |
Northern Dancer | |
Lady Victoria | |||
*レディフランダーズ Lady Flanders |
Chieftain | ||
Moll Flanders | |||
競走馬の4代血統表 |
クロス:Northern Dancer 4×4(12.5%)、Hyperion 5×5(6.25%)
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