ハッピーグリン(Happy Grin)とは、2015年生まれの日本の競走馬である。栗毛の牡馬。
千歳市・社台ファーム生産。
馬名意味は「うれしそうな笑い」。
主な勝ち鞍
2018年:セントポーリア賞(500万下)、STV賞(1000万下)、OROカップ(地方重賞)
生い立ち
父ローエングリン、母レディセラヴィ、母父アグネスタキオンという血統。
父のローエングリンは現役時代マイル~中距離重賞戦線で活躍し、GⅠタイトルには手が届かなかったものの中山記念・読売マイラーズカップをともに2勝している。種牡馬としてはロゴタイプを輩出している。
母のレディセラヴィは現役時代中央競馬で5戦1勝。母父アグネスタキオンは皐月賞優勝の後故障で引退した幻の三冠馬。父としてはダイワスカーレット、ディープスカイ等を名馬を輩出する一方、産駒にも足元の脆さが遺伝こともしばしば。
2015年3月6日、社台ファームにて誕生。その後セレクトセールの当歳馬セールにて800万円で会田裕一氏が落札。全185頭中181番目の落札価格と安価で取引された。
所謂安馬ではあったものの、社台ファームの代表吉田善哉氏は育成時の印象を「クラシックを狙えるかもしれない素材」と評し、馴致を担当した厩務員からは「地面を感じさせない、全身がバネのよう」とかなり高い評価を得ていた。
競走生活
2歳戦
デビューは2017年5月18日、門別のJRA認定フレッシュチャレンジ競走(ダート・1200m(新馬戦))、鞍上は阪野学。1番人気に推されたこのレースでは期待に応え、上がり最速の脚で差し切り勝ち。なおこのレースには後に中央に移籍し、重賞戦線でも活躍するミスマンマミーヤも出走していた(こちらは3着)。
続く2戦は2着2回と勝ちきれなかったものの、4戦目の鞍上服部茂史で挑んだターフチャレンジ競走では2着に2 1/2馬身の差をつけ快勝、中央競馬コスモス賞(札幌・芝・1800m)への出走権を掴んだ。
そのコスモス賞では初の芝でのレースながら3着。次走すずらん賞(札幌・芝・1200m)でも3着と中央の芝でも好走。相手関係を見てもコスモス賞の勝ち馬が後にGⅠを制するステルヴィオ・2着ミスマンマミーア、すずらん賞には重賞やオープンクラスで活躍するリュウノユキナ・モルトアレグロ・オジョーノキセキらが居たことを考えれば健闘したと言えるだろう。
その後はサンライズカップ2着の後、初の重賞挑戦となる北海道2歳優駿(JpnⅢ)では2番人気ながら6着、続く全日本2歳優駿(JpnⅠ)では9着と大敗を喫した。
3歳戦
年明け初戦は再び中央挑戦。500万下のセントポーリア賞に出走、鞍上は大野拓弥。このレース唯一の地方馬ながら激走、最後の直線で上がり33.3秒の末脚を発揮し勝利。東京競馬場での地方所属馬の勝利は10年ぶりの出来事であった。
次走はスプリングステークス(GⅡ)に出走するも8着、続くプリンシパルステークスは最後方からの追い込みで力を見せるも4着。次走巴賞では鞍上を服部茂史に戻して挑み、ゴール板で4頭横並びになる接戦に持ち込むも3着。
その後、鞍上にクリストフ・ルメールを招き挑んだSTV賞では一頭次元の違う脚で差し切り勝ち。続く盛岡競馬のOROカップでは断然の1番人気に支持されると、直線で他馬を置き去りにする圧勝劇で期待に応え2連勝で重賞初勝利。
続くはマイルチャンピオンシップの出走権を狙い鞍上内田博幸で富士ステークス(GⅢ)に挑んだものの見せ場なく11着に敗れる。
ここで陣営はキャピタルステークスとジャパンカップに登録し、ジャパンカップ登録馬がフルゲートに満たなかったためこちらを選択。「10着以内に入れれば」そんな思いでの挑戦であった。
伝説のレースで健闘
迎えたジャパンカップ(GⅠ)、ホッカイドウ競馬からの参戦はコスモバルク以来9年ぶりの出走、鞍上は主戦騎手の服部茂史で挑む。三冠牝馬アーモンドアイを始めキセキ、シュヴァルグラン、サトノダイヤモンド、サトノクラウン、スワーヴリチャードら豪華メンツが揃い、これまでとはレベルが違う相手関係。アーモンドアイが単勝1.4倍と圧倒的支持を集める中、ハッピーグリンは単勝341.2倍の最低人気(14番人気)。
迎えたレース本番、キセキが逃げてレースを引っ張る展開、ハッピーグリンはシュヴァルグラン、サトノダイヤモンドらとともに中段でレースを進行。最後の直線、逃げるキセキをアーモンドアイが残り200mで捉えてそのまま1着でゴールイン、従来のJRAレコードタイムを大幅に塗り替える2.20.6という衝撃のレコードタイムが記録された中ハッピーグリンはサトノクラウンより先着となる7着で入線。
アーモンドアイがとんでもないレコードで駆け抜けたこの競走でハッピーグリンは離された入線ながらも2.22.2のタイムを記録。このタイムは1989年のジャパンカップでオグリキャップをホーリックスが破った歳のタイムであり、後にアルカセットが記録した芝2400mのJRAレコード2.22.1からわずかタイム差0.1しか無い従来のレコード級のタイムであった。
アーモンドアイが伝説を残したこの競走で、地方所属馬のハッピーグリンもまたひっそりと歴史に名を刻んだのであった。
JRA競走2勝、OROカップ勝利、ジャパンカップでの走りなどが評価されこの年のNARグランプリ最優秀ターフ馬に選出された。
4歳、中央重賞戦線で存在感、海外に活路を求める
年明け初戦は父ローエングリンが2勝を挙げた中山記念(GⅡ)から始動、鞍上は短期免許で来日中のフィリップ・ミナリクを起用。大阪杯を狙うラッキーライラック、エポカドーロ、ステルヴィオに加え海外遠征を控えたディアドラ、更には連覇を狙うウインブライトなど錚々たる面子が揃う所謂スーパーGⅡとなったこのレースでハッピーグリンは8番人気。レースは後方で進めるも力の差を見せつけられ人気順と同じく8着に敗れる。
続くは日経賞(GⅡ)を選択、鞍上は服部茂史に戻った。前走に比べ比較的手薄なメンツではあったものの単勝93.7倍の10番人気と穴馬扱い。だがこのレースでは前目の4番手でレースを進めると最後の直線ではエタリオウについていく形で進出、前の馬は捉えられなかったもののゴーフォザサミットとの叩き合いには競り勝ち4着と善戦した。
ここまでの戦いで芝の中距離の適正を示し重賞でも戦える力を示してきたものの、これ以降は現行のルールでは地方所属馬では出走できるレースが限られている。ここで陣営は海外に活路を求めた。香港のクイーンエリザベス2世カップ・チャンピオンズマイルに登録するも選定外に。その後、地方競馬全国協会(NAR)からの助成金が出たことで香港のチャンピオンズ&チャターカップ(GⅠ)へ出走が決定。同競走に出走した最初の日本馬となった。
レースでは前日に降った雨の影響や大外枠も響き9頭立ての8着に終わった。
帰国後短期休養を挟み札幌日経オープン(リステッド競走)を選択。10頭立て8番人気ながら単勝10.7混戦模様のこのレースでは、前走の鬱憤を晴らすかのように3コーナーから上がっていくとゴール板前では4頭もつれる形でゴールイン。大外から飛んできたカフジプリンスに差されたものの2着と好走した。
続くは久々に地方のダート戦となる旭岳賞(門別)に出走し、2番人気に推されたものの6着と力を示せず。その後は毎日王冠8着に敗れる。
ここで収得賞金額を積めなかったことで地方競馬所属では走れるレースが殆どなくなってしまったことかJRA移籍を決断、栗東:長谷川浩大厩舎に転厩した。
中央移籍~引退
転厩初戦のアルゼンチン共和国杯6着、続くチャレンジカップでは鞍上に武豊を招き4着と復調するも、年明け初戦の京都金杯は18着としんがり負け。
この敗戦の後、栗東:森秀行厩舎に転厩。しかし転厩初戦天皇賞(春)はブービーの13着、京都記念11着、大阪杯13着で2戦続けてしんがり負けと見せ場なく3戦続けて大敗。
大阪杯後にJRAの競走馬登録を抹消、岩手競馬の菅原勲厩舎へ移籍。
初戦の皐月特別は3着と好走するも、続くかきつばた賞は11着としんがり負け。
その後故障を発症し現役を引退、現在はホーストラスト北海道にて余生を過ごしている。
エピソード
現役時代は地方所属馬ながら中央競馬や海外に挑戦する姿から「コスモバルクの再来」と呼ばれた。
香港遠征時に「国際競走出走奨励金」が支給された最初の競走馬である。また、遠征資金を賄うためクラウドファンディングを行ったことでも話題となった。
オーナーの会田氏にとっては2頭目の所有馬であり、ハッピーグリンの活躍が一口クラブ法人「ハッピーオーナーズクラブ」を設立するきっかけとなった。
血統表
ローエングリン 1999 栗毛 |
Singspiel 1992 鹿毛 |
In the Wings | Sadler's Wells |
High Hawk | |||
Glorious Song | Halo | ||
Ballade | |||
*カーリング 1992 黒鹿毛 |
Garde Royale | Mill Reef | |
Royal Way | |||
Corraleja | Carvin | ||
Darling Dale | |||
レディセラヴィ 2004 栗毛 FNo.1-g |
アグネスタキオン 1998 栗毛 |
*サンデーサイレンス | Halo |
Wishing Well | |||
アグネスフローラ | *ロイヤルスキー | ||
アグネスレディー | |||
レディセラフィム 1999 鹿毛 |
*ブライアンズタイム | Roberto | |
Kelley's Day | |||
*メイプルジンスキー | Nijinsky | ||
Gold Beauty |
クロス:Halo 4×4(12.50%)、Hail to Reason 5×5×5(9.38%)、Northern Dancer 5×5(9.38%)
関連動画
母馬:レディセラヴィ
現役時代の走り
関連リンク
関連項目
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