プリンスリーギフト(Princely Gift)とは1951年生まれのイギリスの競走馬。
競走馬としてはそこそこながら、種牡馬として一定の成果を収めた。
日本において「プリンスリーギフト系ブーム」が起きた事により、日本で独自の発展を遂げた。
名前は「豪勢な贈り物」という意味。つまらないものではないぞ。
生い立ち、競走馬時代
父Nasrullah、母Blue Gem、母父Blue Peterという血統。
父Nasrullahは本馬が生まれた頃には既にアメリカに渡っており、本馬の同期には英国二冠馬Never Say Dieがいる。母父は1939年の英国二冠馬であるが、よりによってその年に第二次世界大戦が勃発したためセントレジャーが中止。三冠の道を絶たれた悲運の名馬である。母は3勝。ちなみに曾祖母グリームから牝系が大きく広がっており、ジャパンカップに来たティンボロアとか、最近でもモーリスとの対戦が注目されたエイブルフレンドがこの牝系に属する。
前述したNever Say Dieは競走馬として大成したが、本馬はと言えばそれほど活躍した方ではない。
通算23戦9勝、ステークス競走を4勝したが全て1マイル以下の競走である。しかし馬生最後の競走だったポートランドハンデ(5.5ハロン)では130ポンド(約59kg)を背負いながらレコード勝ちを収め高い評価を得た。
ちなみに、戦前から活躍していた名手ゴードン・リチャーズ騎手が最後に勝利を挙げた馬がこの馬である。
総合すると、優れたスピードを有する短距離馬であったが、大レースには縁がなかった。
現代日本で言えばサマースプリントシリーズの王者か。
種牡馬入り後
1956年から英国で種牡馬入り。既にNasrullahが大西洋を挟んだワールドワイドの活躍を見せており、それに応えるかのように種牡馬として一定の成果を見せた。
産駒は自身同様の短距離馬が多く、また仕上がりの早さに定評があった。英国の名物スプリント戦であるナンソープSやジュライCに優勝馬を多数送り出している。しかし、Grey SovereignやNever Say Die、後のBold Ruler、Red God、Never Bendと比べると、当時の欧州競馬はスタミナのある馬が重宝されていたこともあり、さほど目立つ成績ではない。
1973年に22歳で死去。彼の死に前後して、息子が日本で望外の活躍を見せていた。
テスコボーイの活躍とプリンスリーギフト・バブル
その息子とは*テスコボーイ。現役時代は繰り上がりでクイーンアンSに優勝し、その他大レースでは善戦止まりの、プリンスリーギフト産駒の中でも中堅レベルの競走馬である。
そんな*テスコボーイは1968年にアイルランドから、日高軽種馬農業協同組合(以下、日高軽種馬農協)という舌を噛みそうな名前の日本のスタッドへ輸入され種牡馬入りした。
すると初年度から皐月賞馬ランドプリンスを、2年目に二冠馬キタノカチドキ、翌年に二冠牝馬テスコガビー、更に翌年に「天馬」トウショウボーイ……と活躍馬を量産。1974年等4度のリーディングサイアーに輝き、抽選さえ通れば安価な種付料で栗毛じゃなければ高額で売れる馬が出せる、そんな*テスコボーイは一躍大人気に。
テスコボーイ産駒は従来のレコードタイムを次々と更新。70年代後半から、日本競馬に希薄だった「スピード競馬」の概念を植え付ける事に成功、グレード制導入に前後した短距離路線の拡充や長距離レースの距離短縮も一族には僥倖だった。
こうなったらどうするかって? Never Say Dieを知ってるかい?
種牡馬を海外から根こそぎにする勢いでゴッソリ持って来るんだよ!!!
てな訳で本馬を含めたプリンスリーギフト直仔を18頭。孫を含めて20頭以上輸入、種牡馬入り。
文字通り海外からプリンスリーギフトの一族は根こそぎにされ、1980年代の時点で、日本以外でプリンスリーギフトの系統はほぼ消失。これに関しては日本国内でも賛否両論。
しかし、日本に輸入されたプリンスリーギフト系種牡馬達は結果を残し始める。
欧州でも凱旋門賞馬を出すなど(なおそいつらも輸入した)活躍していた*ファバージが皐月賞馬ハードバージなど、*バーバーが有馬記念馬カネミノブ、*ボイズィーボーイがジャパンカップ馬カツラギエースと70~80年代を中心に隆盛した。
現在のプリンスリーギフト系? バッチリ日本に適応して生き残りました。
*テスコボーイ産駒の中でも、トウショウボーイは格安の種付け料で高く売れる産駒を出したことで「お助けボーイ」と呼ばれ数々の牧場を救い、三冠馬ミスターシービーをはじめとする活躍馬を多数出した。サクラユタカオーも種牡馬として成功を収め、史上最強短距離馬サクラバクシンオー、1998年クラシック世代のマイル王エアジハードが登場。サクラバクシンオーは*サンデーサイレンス旋風の中にあって、非サンデー系で仕上がりの早い短距離馬を出す種牡馬として産駒JRA1400勝を超える成功を収めた。
2023年現在のプリンスリーギフト系は*テスコボーイ系に集約されたが、トウショウボーイのラインはミスターシービーが失敗したこともあって途絶えてしまい、サクラユタカオー→サクラバクシンオーの系統に託されている。サクラバクシンオーの代表産駒のうち、ショウナンカンプは種牡馬引退、グランプリボスも事実上引退同然だが、ビッグアーサーがラインを繋ぐべく絶賛奮闘中である。
テスコボーイ→サクラユタカオー→サクラバクシンオー→ビッグアーサーと繋がる系統は、今の日本でトップクラスに長く続いている父系である(それより上はギンザグリングラスくらい)。
日本の高速馬場に上手く適合したプリンスリーギフトの系統は今も残っている、もし将来、この系統からイギリスの短距離GIを制し、プリンスリーギフトの数世代越しの栄光が見られるのなら、それは日本が「父系の墓場」と呼ばれた汚名を完全に晴らす事が出来るのではないだろうか。
血統表
Nasrullah 1940 鹿毛 |
Nearco 1935 黒鹿毛 |
Pharos | Phalaris |
Scapa Flow | |||
Nogara | Havresac | ||
Catnip | |||
Mumtaz Begum 1932 鹿毛 |
Blenheim | Blandford | |
Malva | |||
Mumtaz Mahal | The Tetrarch | ||
Lady Josephine | |||
Blue Gem 1943 鹿毛 FNo.13-a |
Blue Peter 1936 栗毛 |
Fairway | Phalaris |
Scapa Flow | |||
Fancy Free | Stefan the Great | ||
Celiba | |||
Sparkle 1935 鹿毛 |
Blandford | Swynford | |
Blanche | |||
Gleam | Galloper Light | ||
Eagerford |
クロス:Pharos=Fairway 3×3(25%)、Blandford 3×4(18.75%)、The Tetrarch 4×5(9.38%)
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関連項目
Princely Gift 1951
|King's Troop 1957
||*ボイズィーボーイ 1965
|||カツラギエース 1980
|*ファバージ 1961
||*ゲイルーザック 1969
|||ロンググレイス 1980
||ハードバージ 1974
||ヒダショウウン 1979
|||スーパーオトメ 1993
||マチカネイワシミズ 1983
|*テスコボーイ 1963
||キタノカチドキ 1971
||テスコガビー 1972
||トウショウボーイ 1973
|||ミスターシービー 1980
||||ヤマニングローバル 1987
||||シャコーグレイド 1988
||||マーチンコウ 1988
|||アラホウトク 1985
|||パッシングショット 1985
|||サクラホクトオー 1986
|||ダイイチルビー 1987
|||サンゼウス 1988
|||シスタートウショウ 1988
|||セキテイリュウオー 1989
||ホクトボーイ 1973
||ハギノカムイオー 1979
||サクラユタカオー 1982
|||サクラバクシンオー 1989
||||ブランディス 1997
||||ショウナンカンプ 1998
||||カノヤザクラ 2004
||||グランプリボス 2008
||||バクシンテイオー 2009
||||ビッグアーサー 2011
|||||トウシンマカオ 2019
|||||ブタノカックーニ 2019
|||||リトルココン 2020
|||ユキノビジン 1990
|||エアジハード 1995
||||ショウワモダン 2004
|*バーバー 1965
||カネミノブ 1974
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