埼玉愛犬家連続殺人事件とは、1993年(平成5年)に日本の埼玉県熊谷市周辺で発生した殺人事件である。証拠隠滅のために、遺体を細かく切り刻み遺棄した異常な手法は「遺体なき殺人」とも呼ばれた。園子温が監督と脚本を務めたホラー映画『冷たい熱帯魚』の元ネタとしても知られる。
概要
埼玉県にあったペットショップ経営者の関根元とその妻である風間博子、店舗役員の山崎永幸らによる連続殺人事件。
主犯の関根元はペットショップ『アフリカケンネル』の経営者で、ブームとなるシベリアンハスキーを日本で最初に輸入したり、犬の競技大会で育てた犬が何匹も優勝したりと、業界では有名人だった。
関根には左手の小指がなく、背中にはライオンの刺青が入っていたが、非常に愛想がよく話し上手なため、人脈は多岐にわたった。しかし、平気で暴力をふるい、未成年の少女とも肉体関係を持つなどしていたため従業員からの評判はすこぶる悪かった。
関根は地元の組で組長代行を務めているヤクザをよく連れ歩いていたため、誰も表立って文句は言えなかったのである。
山崎は群馬県片品村でブルドックのブリーダーとしてそこそこ成功を収めていたのだが、驚異的な利益を上げていた関根の経営を学ぼうと役員となった。
しかし、役員となって間もなく、山崎は関根が口から出まかせの詐欺師であることを知り、辟易としていく。
そんな中、関根から利殖目的で犬を購入した会社役員の男性との間で支払いを巡りトラブルが発生すると、関根はこの男性の飲み物に犬の殺処分用の硝酸ストリキニーネを混ぜ殺害。そして、唖然とする山崎をしり目に、山崎が所有する山腹のブルドッグ繁殖所『ポッポハウス』まで死体を運び、「これからボディを透明にする」と言い放ち、浴槽の中で遺体を解体。その後、関根の指示で彼の妻とともに死んだ会社役員の車を東京の駐車場まで捨てに行った山崎がポッポハウスに戻った時、死体はすでに人間の形をしていなかった。関根はこのとき驚愕する山崎に「俺は2時間で人間を解体できる」と豪語したという。
死体は2cmから3cmに細切れにされ山を流れる清流に撒かれた。骨は車の廃オイルで灰になるまでじっくり焼かれ、山道に散布された。骨に肉が付いたままだと異臭が発生するため骨から肉を綺麗にこそぎ取るのがコツだという。
会社役員が殺害されて少しした後、関根を訝しんだ被害者男性の家族がアフリカケンネルに怒鳴り込んできたが、家族の訪問を事前に察知していた関根は懇意にしているトラブル仲裁役の地元ヤクザに応援を要請しており、これを撃退。
しかし、詐欺まがいのトラブルを何度も黙らせるのに使ってきたヤクザに収める上納金がペットショップの経営を圧迫。さらに店の権利書まで要求してきたため、このヤクザを彼の自宅で、彼の運転手ともども栄養剤と偽った硝酸ストリキニーネを飲ませ殺害。
異常なまでに性欲が強い関根は複数の愛人を囲っていたが、店の従業員の母親で愛人の1人とトラブルが発生し彼女を殺害したのち死姦。ヤリながら「女は3人殺してるが全員死んだあと犯した」と述べていたという。
こうして完全犯罪を成し遂げていったかのように見えた関根だったが、このとき、まったくの別件で大阪で愛犬家が相次いで殺される事件が発生し大々的に報道され、その中で関根のペットショップの客が失踪していることに注目が集まる。
そして、関根によって共犯者に仕立て上げられた山崎の供述により死体遺棄現場の捜索がなされたところ、本件で最初に殺された会社役員男性の遺骨や高級時計が発見されるなどしたため関根と風間、そして山崎が死体損壊・遺棄容疑で逮捕。
公判において、関根と風間はそれぞれ互いに相手が主犯だと主張したが、浦和地裁(現:さいたま地裁)は元夫婦が対等の立場で共謀し、犯行に及んだと認定。2001年3月21日に元夫婦に求刑どおり死刑判決を言い渡した。
山崎は3年服役したのち出所。本事件の本を執筆するなどしている。
2017年3月27日、関根が東京拘置所内で病死。75歳だった。
補足
- 関根には、世の中のためにならない人間を殺す、すぐに足がつくため保険金目当てでは殺さない、欲張りな人間を選ぶ、現場で血を流さない、死体は完全に透明にするといった彼流の殺しの哲学があった。他はともかく世のためにならない~は完全に関根の都合である。
- 関根の周囲ではわかっているだけでも11名の行方不明者がいるが、関根は「30人以上殺した」と言っていたという。「殺しのオリンピックがあれば間違いなく金メダルがとれる」と豪語していたとも。
- 関根は「俺には同じような殺し屋の仲間が10人いる」と述べていた。
関連動画
関連リンク
- 検事の取り計らいで妻と取調室セックス…平成最大の猟奇事件の捜査過程はなぜ不可解なのか
- アフリカケンネルの現在!「冷たい熱帯魚」の舞台を訪ねて
- 「愛犬家連続殺人」死刑囚息子が語る壮絶な人生 「自分もいつ殺されてもおかしくなかった」
- 「埼玉愛犬家連続殺人」2人の子供が明かす両親の意外な素顔 「私には甘い優しい父親でした」
- 埼玉愛犬家連続殺人事件から25年 冤罪を訴える風間博子死刑囚からの手紙
関連項目
親記事
子記事
- なし
兄弟記事
- 附属池田小事件
- n番部屋事件
- マクマーティン児童施設裁判
- 旧石器捏造事件
- 帝銀事件
- ジョンベネ殺害事件
- ディー・ディー・ブランチャード殺害事件
- 長岡京ワラビ採り殺人事件
- 済州島四・三事件
- プチエンジェル事件
- 神戸連続児童殺傷事件
- 国電同時多発ゲリラ事件
- おい、小池!
- 飯塚事件
- ボストン茶会事件
▶もっと見る
- 2
- 0pt