コーリンベリー(Corin Berry)とは、2011年生まれの日本の競走馬。栗毛の牝馬。
松山弘平に初GI級勝利を贈った馬であり、2023年現在、JBCスプリントを制した唯一の牝馬である。
主な勝ち鞍
2015年:JBCスプリント(JpnI)、かきつばた記念(JpnIII)
2016年:東京スプリント(JpnIII)
概要
父サウスヴィグラス、母コーリンラヴィアン、母父*ミシックトライブという血統。
父は2002年から2003年のダート短距離界に君臨したJBCスプリント勝ち馬で、種牡馬としては地方競馬記録の数々を大幅に塗り替えた地方の歴史的大種牡馬。
母は名古屋で15戦11勝の戦績を挙げて中央入りしたが中央では500万下を1勝したに留まり、その後は名古屋に戻って7歳まで走ったが以降は未勝利に終わった。通算59戦12勝。コーリンベリーは第2仔。相当気性が荒く、牧場も手を焼くほどだったそうで、今井牧場の代表が高齢になったこともあって2015年の春に前谷ファームに移動。2022年に転売不明となっている。
母父は大種牡馬Mr. Prospectorと超名牝Miesqueの間に産まれたアメリカの馬。つまりエルコンドルパサーやキングカメハメハの父Kingmamboの全弟である。自身は僅か1戦、未勝利で引退したが、アロースタットに購入され日本で種牡馬入りした。しかし日本でも中央どころか地方でも重賞馬を出せず僅か5年でアロースタッドを出されてしまった。
牝系を見渡しても、半兄コーリンギデオンが中央で4勝を挙げているぐらいで、地方でも重賞クラスの活躍馬はおらず、4代母*チユデスタまで遡ってようやく福島記念勝ち馬シルクグレイッシュが出てくる程度。良さそうなら一応中央でデビューさせてもいいけど基本は地方でがんばろう、って感じの血統である。
2011年4月13日、日高町の今井牧場で誕生。今井牧場は昭和41年にアラブ1頭から生産を始めた、生産頭数が年に数頭の家族経営牧場であり、アラブではセイユウ記念を連覇したヒロタイムを生産しているが、サラブレッドでは重賞どころか中央でオープンまで勝ち上がった馬はコーリンベリーが初めてであったようだ。
Googleストリートビューで住所を見ると2023年現在も看板が残っているのが確認できるものの、ジャパン・スタッドブック・インターナショナルの登録情報などを見る限り、2014年限りでほぼ生産牧場としては手じまいし、2017年に最後に残っていた繁殖牝馬のコーリンピュアが死亡した時点で生産牧場としては廃業したようである。
オーナーは「コーリン」冠名を用い、今井牧場の生産馬をよく所有していた伊藤恵子。地方移籍後は伊藤恵介名義となっていた。
馬名意味は「冠名+小果実」。なおコーリンベリーはデビュー当時こそ460kg程度だったが、現役後半は500kgを超え、牝馬としてはむしろ大柄な馬であった。
小さな果実は足が速い
2歳~3歳(2013年~2014年)
当歳の頃から気性の荒い母に似ず人に従順、非常に利口で大人しい優等生だったというコーリンベリーは、2歳となって栗東・柴田政見厩舎に入厩し、2013年8月3日、小倉・芝1200mの新馬戦で小牧太を鞍上にデビュー。前述の通りの地味血統ゆえ単勝141.3倍の14番人気という低評価で、それを覆すでもなく特に見せ場なく11着という、後のGI馬とは思えない地味なデビューだった。2歳時は結局この1戦で終了する。
しばらく休んで明けて3歳、1月の京都・ダート1200mの牝馬限定の未勝利戦で復帰。鞍上はデビュー6年目の松山弘平となり、ここから中央抹消まで1戦を除いて松山が手綱を取ることになる。
ここでも単勝140.2倍の13番人気という低評価だったが、人気薄で勝ちに行くなら前でレースをしようと松山騎手が逃げさせると、そのままあっさりと逃げ切って1馬身半差の快勝。複勝でも3380円、3着に9番人気を連れてきてワイドは32,410円、3連単は159万580円ついた。
ちなみにデビュー当初は評価が低かった平地GI馬というのは結構いるが、新馬戦・未勝利戦で2度も単勝万馬券オッズを経験しているのは他にアイコンテーラーぐらい(何の因果かGI級勝利はどっちも松山弘平)、実際に万馬券を出したのはコーリンベリーが唯一である。
続く同条件の500万下も牡馬相手にあっさり逃げ切って勝利し、中京の昇竜S(OP)へ。ここでも単勝15.0倍の9番人気と決して評価は高くなかったが、大外枠からポンと好スタートでハナを奪うと、直線で迫ってきた後続を力強く突き放して2馬身半差で快勝。3連勝でオープン勝利を飾る。
この賞金で、陣営はなんと桜花賞(GI)挑戦を決める。ここではさすがに松山騎手も別の馬を優先したので藤田伸二が騎乗したが、あえなくブービーからも2秒近く離された大差の最下位。仕方ないね。これですっぱり芝を諦め、以降はダートに専念する。
というわけで気を取り直し、鞍上も松山騎手に戻って端午S(OP)に向かう。ここでは以降何度も何度も対戦することになるニシケンモノノフと初顔合わせ。レースはフクノドリームと一緒に逃げ、直線でも粘りに粘ったが、最後はメイショウパワーズにクビ差かわされ惜しくも2着。
続く(桜花賞を除いて)初の1600mとなるユニコーンS(GIII)では前走から+20kgという馬体重だったが、これは成長分だったそう。大外枠から好スタートで逃げ、直線でも粘ったがレッドアルヴィスに2馬身半突き放されての2着。
次走は同世代の牡馬相手に勝ち負けになる立場で51kgという軽ハンデを貰えるということもあってか、古馬牡馬との対戦となるプロキオンS(GIII)に向かったが、ここではスタートで立ち後れてしまう。二の脚を使ってハナを切ったものの、さすがに古馬牡馬の壁は高く直線で飲まれて9着。
一休みして11月、盛岡・1800mのJBCレディスクラシック(JpnI)に挑戦。最内枠から逃げを打ったが、1800mは流石に長かったか4コーナーでもう捕まり、JRA勢最下位の9着。
2戦続けて惨敗ではあるが、相手のレベルも高いし出遅れや距離など敗因も明確。そのことを証明するように、年末の2014ファイナルS(OP)では逃げてそのまま2着ニシケンモノノフを3馬身半ちぎり捨てる圧勝でオープン2勝目を挙げて3歳シーズンを締めくくった。
4歳(2015年)
明けて4歳初戦は果敢にフェブラリーS(GI)に挑戦したが、スタートで思いっきり出遅れてしまう。コパノリッキーら相手では二の脚で前に行くこともできず、見せ場なく10着。
気を取り直してコーラルS(OP)では自身が1番人気で、もう4度目の対戦となるニシケンモノノフが2番人気。先行馬が多かったこともあり外枠から無理にハナを切らずニシケンモノノフと並んで5番手でのレースとなったが、直線で悠々と抜け出すと、2着ニシケンモノノフを再び3馬身ちぎり捨てて圧勝。脚質の幅も広がり充実を示すオープン3勝目を挙げた。
続いてかきつばた記念(JpnIII)。ここでは堂々単勝1.5倍の1番人気に支持され、重馬場を活かして緩みのないラップを刻んで逃げる得意のパターンに持ち込み、そのまま1馬身半差で悠々と押し切って快勝。待望の重賞初勝利を挙げた。
プロキオンS(GIII)では2番人気に支持され、逃げて粘ったものの昨年の南部杯勝ち馬ベストウォーリアにかわされて2馬身差の2着。
秋はJBCスプリントを目標に定め、前哨戦の東京盃(JpnII)へ。ここではこの年覚醒してダート短距離重賞を勝ちまくっていたダノンレジェンドと初対決、ダノンレジェンドに次ぐ2番人気に支持されたが、スタートで後手を踏んでしまい逃げられず、大外から押し上げて行って逃げるシゲルカガと2番手のダノンレジェンドに迫ったものの、直線でダノンレジェンドに振り切られ、ドリームバレンチノにもかわされて3着。
このレースのあと、管理する柴田政見調教師が体調不良で勇退。大一番を前にコーリンベリーは美浦の小野次郎厩舎に急遽転厩することになった。
そんなわけで迎えたJBCスプリント(JpnI)ではダノンレジェンドが1.6倍の断然人気で、2番人気はベストウォーリア。紅一点のコーリンベリーは3番人気だったものの、オッズは10.5倍と、前走と同じ大井1200だし前走でダノンレジェンドとの勝負付けは済んだという感じの評価だった。転厩初戦で+10kg、500kgに乗った馬体重もやや不安要素だったかもしれない。
しかしコーリンベリーもダノンレジェンドも基本は逃げ馬。そして競馬ファンが思っているほどにはこの2頭の力の差はなかった。そんな逃げ馬同士なら――楽に逃げた方が勝つ。
レースが始まる。コーリンベリーは内枠から絶好のスタートを決めてあっさりハナに立つ。ダノンレジェンドは3番手で虎視眈々とそれを追ったが、道中息を入れて直線の脚を残したコーリンベリーは止まらない。ダノンレジェンドのミルコ・デムーロ騎手も村山明調教師もこの展開でまさか負けるとは思っていなかったが、そんなダノンレジェンドを全く寄せ付けないまま、コーリンベリーは鮮やかに逃げ切った。
父サウスヴィグラスとの親子制覇を果たし、牝馬のJBCスプリント制覇は15回目にして史上初(2023年現在も唯一)。牝馬が古馬の牡牝混合ダートGI級を勝利したのは、2003年帝王賞のネームヴァリュー以来12年ぶり4頭目。松山弘平騎手、小野次郎調教師、伊藤恵子オーナー、生産牧場の今井牧場の全員が嬉しいGI級初勝利である。
ダノンレジェンドを警戒して最後の直線では「焦りこそしなかったものの“頼むから何も来ないでください!!”という気持ちで追っていました」という松山騎手は、「ずっと乗せていただいたこの馬でJpnIを勝てて感謝の気持ちでいっぱいです」と語り、牧場の今井夫婦は牧場開業から49年目でのGI初勝利にテレビの前でむせび泣いた。
この後はチャンピオンズカップ(GI)に挑戦。やっぱり1800mはさすがに長かったし、コパノリッキーら相手では逃げられもせず4番手からじわじわ後退して13着に終わったが、クリノスターオーや香港のガンピットらと一緒にコパノリッキーに絡んでいった結果、超ハイペース前潰れの展開を誘発、サンビスタの史上初JRAダートGI牝馬制覇を演出した……のかもしれない。
5歳(2016年)
明けて5歳初戦は再びフェブラリーS(GI)に挑戦、ハナを切って逃げたが直線で沈んでブービー15着。モーニンのコースレコード勝利を演出するに留まる。
続いて向かった東京スプリント(JpnIII)では、ダノンレジェンドと3度目の対戦。相変わらずダノンレジェンド1.4倍に対して6.8倍の3番人気という評価だったが、なんとダノンレジェンドが出遅れ。好スタートからハナを切ったコーリンベリーは、押し上げて追ってきたダノンレジェンドを全く寄せ付けず、後続を突き放して2馬身半差の快勝。重賞3勝目を挙げた。
この年のJBCスプリントは(交流重賞の開催されていない)川崎1400mということもあり、1400に慣れさせようと次走は浦和のさきたま杯(JpnII)へ。ベストウォーリアと大井のソルテに次ぐ3番人気となり、レースは大外枠から逃げるソルテを2番手で追走したが、4コーナーでいっぱいになってしまい後退、まさかの8着に撃沈。
夏休みを挟んでJBCスプリントの前哨戦として向かった東京盃(JpnII)では4度目のダノンレジェンドとの対決。ここまで3回戦って全て前に行った方が勝っているだけあって、お互い絶対にハナは譲らないとばかりの競り合いとなる。ところがこれで両者とも消耗してしまい、ダノンレジェンド(5着)には先着したものの、ドリームバレンチノの差し脚に屈して2着。
そして連覇を目指したJBCスプリント(JpnI)では、この一戦に必勝を賭けて臨んだダノンレジェンドが全力でハナを叩き、それを3番手で追ったものの、ダノンレジェンドには8馬身も突き放された3着。見事に昨年の借りを返されてしまった。
年末はカペラS(GIII)に向かい、久しぶりにニシケンモノノフと再会。1番人気に支持されたが、4番手の好位先行で進めたものの逃げたノボバカラの影も踏めず、ニシケンモノノフにもかわされて3着。初めてニシケンモノノフに先着を許したこのレースが、彼女のピークの終わりを象徴していた。
6歳~7歳(2017年~2018年)
6歳も現役続行したが、初戦の根岸S(GIII)のゲート内で脚をぶつけてしまったらしく、ノボバカラと一緒に大出遅れして最下位ノボバカラと一緒に見せ場なくブービー撃沈。レース後に右第4中手骨骨折で休養に入ることになってしまった。年齢を考えれば普通はここで繁殖入りではないかと思うが、繁殖入りしなかったのは故郷の今井牧場が生産を廃業してしまっていたためだろうか。
ともあれ8ヶ月強休んで東京盃(JpnII)で復帰したが、2番手でシゲルカガを追ったものの直線では粘りなく6着。コパノリッキーが殴り込んできたJBCスプリント(JpnI)ではハナを切って逃げたが、直線を押し切るだけの力はもう彼女にはなく、3歳のときにはボコボコにしていたニシケンモノノフにあっさりとかわされて、その勝利を6着で見届けるしか出来なかった。
その後のカペラS(GIII)ではスタートダッシュがつかず、3番手まで押し上げたが4コーナーでもうズルズルと沈んで最下位に撃沈。さすがにもう引退では……と思われたが、なんと7歳も大井の的場直之厩舎に移籍して現役続行となる。しかし移籍初戦のしらさぎ賞を4着に敗れると、アフター5スター賞(SIII)は最下位に撃沈。結局このレースを最後に引退、繁殖入りすることになった。通算29戦8勝。
引退後
故郷の今井牧場は生産をやめてしまっていたため、母コーリンラヴィアンのいる新ひだか町の前谷ファームで繁殖入り。
スタッドブックの情報によると、2021年にオルフェーヴルを種付けしたところから平取町の中田牧場に所有者が変わり、さらに2023年にジャスタウェイを種付けした時点では浦河町のグランデファームの所有になっているようだ(グランデファーム公式サイトの2024年生産予定馬のところには名前がないのだがが……?)。母の快速ぶりを受け継ぐ仔は現れるだろうか。
血統表
*サウスヴィグラス 1996 栗毛 |
*エンドスウィープ 1991 鹿毛 |
*フォーティナイナー | Mr. Prospector |
File | |||
Broom Dance | Dance Spell | ||
Witching Hour | |||
*ダーケストスター 1989 黒鹿毛 |
Star de Naskra | Naskra | |
Candle Star | |||
Minnie Riperton | Cornish Prince | ||
English Harbor | |||
コーリンラヴィアン 2001 芦毛 FNo.4-g |
*ミシックトライブ 1996 栗毛 |
Mr. Prospector | Raise a Native |
Gold Digger | |||
Miesque | Nureyev | ||
Pasadoble | |||
コーリンビビアン 1993 芦毛 |
*アジュディケーティング | Danzig | |
Resolver | |||
シルケット | *ハバット | ||
*チユデスタ |
クロス:Mr. Prospector 4×3(18.75%)、Northern Dancer 5×5×5(9.38%)
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